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薬師(やくし)温泉(おんせん)】「旅籠(はたご)」で(むかし)の日本人のくらしを体験!

みなさんが日本の国内(こくない)を旅行していると、もしかしたら下の写真のような文字を見かけることがあるかもしれません。これは日本語でどう読むのか、そして何を意味するか、わかるでしょうか?

正解(せいかい)は「はたご」です。「旅籠(はたご)」とは、旅行者が食事つきで()まることができる宿(やど)、つまり旅館のことで、江戸時代(えどじだい)から使われていたことばです。当時(とうじ)は旅行するときの移動(いどう)(うま)を使っていて、(うま)の食べ物を入れておくカゴ(籠)のことを「旅籠(はたご)」と()びました。それが時代の変化(へんか)とともに、旅行者の食糧(しょくりょう)を入れるもの、さらに食事を出す宿(やど)へと、意味が()わっていったそうです。それ以来「旅籠(はたご)」は旅館とほぼ同じ意味で使われ、歴史(れきし)が長い宿(やど)では今も「旅籠(はたご)」の看板(かんばん)を出しているところがあります。それでは(むかし)の「旅籠(はたご)」とは、どんなところだったのでしょうか? 今回(こんかい)はそんなふんいきを体験できる場所(ばしょ)へ行ってみましょう。

(むかし)の「旅籠(はたご)」のふんいきが(のこ)看板(かんばん)と入口

ここは薬師(やくし)温泉(おんせん)かやぶきの(さと)」です。看板(かんばん)には、温泉(おんせん)の名前といっしょに「旅籠(はたご)」と書いてありますね。中へ入ると、古い家が(なら)んでいるのが見えてきます。特にめずらしいのは、屋根(やね)構造(こうぞう)です。

日本の伝統的(でんとうてき)な建物、「かやぶき」

これは「かやぶき」と()ばれ、(むかし)は日本を代表(だいひょう)する建物でした。この屋根(やね)は「(かや)」というイネ()植物(しょくぶつ)からできています。植物(しょくぶつ)屋根(やね)をつくるなんて、大丈夫(だいじょうぶ)なのかと思うかもしれませんが、(かや)をかさねていっしょにするととても丈夫(じょうぶ)になり、夏は(すず)しく冬は(あたた)かいので、エアコンがない時代でも快適(かいてき)だったそうです。世界遺産(せかいいさん)として有名な、岐阜(ぎふ)(けん)飛騨地域(ひだちいき)白川郷(しらかわごう)も「かやぶき」でできています。

かやぶきの屋根(やね)は高くて中は広い

「かやぶきの(さと)」では、(むかし)全国(ぜんこく)で使われていた「かやぶき」の家をここに(うつ)して、住民(じゅうみん)実際(じっさい)に使っていた家具(かぐ)食器(しょっき)といっしょに展示(てんじ)しています。展示(てんじ)からは、古い時代に日本人がどんなくらしをしていたかが(つた)わってきます。

(かお)りを出す香炉(こうろ

生活(せいかつ)に使われていた食器(しょっき)茶器(ちゃき)

特におもしろいのはタンスで、商売(しょうばい)に行く人(行商人(ぎょうしょうにん))が背中(せなか)(かつ)いで長い距離(きょり)移動(いどう)したものや、漢方薬(かんぽうやく)を入れるためのものがあります。薬用(くすりよう)のタンスには小さな()き出しがたくさんついていて、(くすり)種類(しゅるい)によって入れる場所(ばしょ)(こま)かく分けていたことがわかります。

商売(しょうばい)に行く人が使っていた行商(ぎょうしょう)タンス

漢方薬(かんぽうやく)を入れる(くすり)タンス

(くすり)といえば、「薬師(やくし)温泉(おんせん)」の名前にも使われていますね。もともと温泉(おんせん)は、(くすり)が多くない時代に、人々が病気をなおすため必要(ひつよう)なものでした。「薬師(やくし)」という日本語にはいろいろな意味があり、「やくし」と読むときは「薬師(やくし)神社(じんじゃ)」や「薬師(やくし)(ぞう)」など神社(じんじゃ)(ほとけ)さまの名前で使われますが、「くすし」という読み方もあり、これは今の医者や薬剤師(やくざいし)と同じ意味です。

健康(けんこう)家内(かない)安全(あんぜん)(ねが)薬師(やくし)神社(じんじゃ)磯部(いそべ)温泉(おんせん)

現代(げんだい)の「薬師(くすし)」がいる薬局(やっきょく)

「かやぶきの(さと)」の中を移動(いどう)していく道は、たくさんの木でできています。これは鉄道(てつどう)線路(せんろ)の下に()いている木と同じ種類(しゅるい)で、「枕木(まくらぎ)」といいます。コンクリートとはちがい、上を歩くとやわらかい感覚(かんかく)が体じゅうに(つた)わります。

全国(ぜんこく)から集めた二万本の枕木(まくらぎ)(なら)

さらに(おく)(すす)むと、たくさんの古い家が集まった「集落(しゅうらく)」になっていて、まるで映画やドラマを()場所(ばしょ)のようです。ここを歩いているだけで、過去(かこ)へと時間旅行をしている気分になります。

映画の中にいるような「集落(しゅうらく)」の風景(ふうけい)

そんな時に、いきなり目の前にあの動物が出てくると、みなさんはビックリするかもしれません。なんと(くま)がいるのです! と言っても、もちろん本物ではありません。(むかし)、この近くによく(あらわ)れたオスの(くま)のことを展示(てんじ)しています。最近(さいきん)は人が住んでいる場所(ばしょ)によく出てくる(くま)ですが、(むかし)から動物と人間の(かか)わりは大きな問題だったのですね。

(くま)(むかし)から人が住む場所(ばしょ)(あらわ)れていた

さて、古い時代の日本を見てまわった後は、建物の中にある温泉(おんせん)に入りましょう。薬師(やくし)温泉(おんせん)は今から(やく)230年前に旅行者が発見しました。地下から自然(しぜん)の力で出ているお()で、温度(おんど)は40度ぐらいなので、そのまま「かけ(なが)し」で入ることができ、筋肉(きんにく)神経(しんけい)(いた)みに()()きます。

「かけ(なが)し」で入ることができる新鮮(しんせん)温泉(おんせん)

いくつかあるお風呂(ふろ)(うち)、日帰りでも入ることができる「滝見(たきみ)()()」は、すぐ目の前を(たき)(なが)れる場所(ばしょ)です。日本ではほかに「雪見(ゆきみ)風呂(ぶろ)」や「花見(はなみ)風呂(ぶろ)」などを楽しみますが、「滝見(たきみ)風呂(ぶろ)」もすぐ近くに自然(しぜん)(かん)じながら、(むかし)の人と同じ気分を味わうことができるでしょう。

(たき)(なが)れを(かん)じながら温泉(おんせん)を楽しめる

薬師(やくし)温泉(おんせん)「かやぶきの(さと)」は群馬県(ぐんまけん)東吾妻町(ひがしあがつままち)にあります。現地(げんち)に行けば、観光客(かんこうきゃく)として中の建物を見学し、温泉(おんせん)に入ることができます。ゆっくり楽しみたい人は、(むかし)のふんいきが(のこ)る「旅籠(はたご)」に宿泊(しゅくはく)してみるのも()いでしょう。

文:白石誠

写真:白石誠

(2024.4.5)

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