日本語多読道場 yomujp
【磯部いそべ温泉おんせん】
「食べる温泉おんせん」も楽しめる
日本で最初さいしょにが生まれた場所ばしょ?
今回こんかいは簡単かんたんな質問から始めましょう。みなさんは、次つぎのような記号きごうを見たことがありますか? これが何を意味するか、わかるでしょうか?
初はじめて日本に来た外国人の中には、これを見て、あたたかい料理や、料理が食べられるレストランだと思う人がいるようです。そうではありません。答えは「温泉おんせん」です。まちの中や地図で、この記号きごうを見つけたら、そこには温泉おんせんがあるという意味です。
ではこの記号きごうは、いつから、どこで、使うようになったのでしょうか? これから行く磯部いそべ温泉おんせんは、そのはじまりと関係かんけいがあります。
磯部温泉(いそべおんせん)
「温泉おんせん記号きごう発祥はっしょうの地」と書いてありますね。「発祥はっしょう」とは、新しいものが生まれる、はじまるという意味です。磯部いそべ温泉おんせんは、日本で最初さいしょに、温泉おんせんの記号きごうが使われた場所ばしょなのです。今から約やく360年前、住民じゅうみんが土地の問題で争あらそいました。その時の地図に、この記号きごうが2つのっています。ずっと昔むかしから、ここには温泉おんせんがあったのですね。
最初さいしょの温泉おんせん記号きごう
上の絵えが、その温泉おんせん記号きごうです。まるで、クラゲ(海の生き物)を逆ぎゃくにしたような、おもしろい形かたちをしていますね。
そして約やく240年前になると、近くの浅間山あさまやまという火山が爆発ばくはつして、地面じめんの下から出る温泉おんせんの量りょうが増ふえました。25年前には、新しくお湯ゆが出る場所ばしょ(源泉げんせん)も見つかっています。
磯部いそべ温泉おんせんのお湯ゆは、温度おんどが少し低ひくいので、ゆっくりと時間をかけて体をあたためることができます。お湯ゆの中に入ると、まるで化粧水けしょうすいで洗あらったように、お肌はだがきれいになるので、特に女性じょせいに人気です。
磯部いそべ温泉おんせんのお湯ゆ
さて、磯部いそべ温泉おんせんに来たら、温泉おんせんに入るだけではなく、「食べる温泉おんせん」も楽しみましょう。磯部いそべ温泉おんせんの成分せいぶんには、炭酸たんさん(carbonic acid)がたくさん含ふくまれていて、昔むかしから、飲むと健康けんこうに良よい、と言われていました。この温泉おんせんを使った食べものがいくつかあります。
一番いちばん有名なのは「磯部いそべせんべい」です。小麦粉こむぎこと砂糖さとうに、温泉おんせんの水を加くわえて焼やいたおかしです。米こめから作られたせんべいよりもやわらかくて、少し温泉おんせんの香かおりがします。有名な店では、目の前で焼やくのを見ることができます。最近さいきんは、抹茶まっちゃや、しょうがの入った商品しょうひんもあり、おみやげとして人気です。
磯部いそべせんべい
おみやげとして売っている
また、「鉱泉こうせん豆腐どうふ」という食べものも、ためしてみましょう。「鉱泉こうせん」とは、温泉おんせんのことです。豆腐とうふを、なべであたためるときに、普通ふつうのお湯ゆではなく、温泉おんせんのお湯ゆを使います。温泉おんせんの成分せいぶんで豆腐とうふがやわらかく溶とけて、スープもおいしくなるからです。次つぎの左側ひだりがわの写真は、旅館「見晴館みはらしかん」で食べることができる「ふわふわ豆腐とうふ鍋なべ」です。右の杏仁あんにん豆腐どうふと比くらべてみてください。本当ほんとうに「ふわふわ」している感かんじでしょう?
鉱泉こうせん豆腐どうふ
杏仁あんにん豆腐どうふ
次つぎは、磯部いそべ温泉おんせんにしかない、めずらしいメニューです。普通ふつうのカレーライスですが、ご飯の形かたちを見てください。これは何に見えますか?
ご飯の形かたちは何の形かたち?
もうわかりましたね? 温泉おんせん記号きごうの形かたちをしています。料理の名前は「温泉おんせんマークカレー」です。「マーク」とは、記号きごうのことです。磯部いそべ温泉おんせんにある「レストラン西洋亭せいようてい」で食べることができます。
この場所ばしょだけは、♨=レストランだと思って入っても、大丈夫だいじょうぶですね!
レストラン西洋亭せいようてい
磯部いそべ温泉おんせんは群馬県ぐんまけんの安中市あんなかしにあります。JR線せんの磯部いそべ駅から歩いて行くことができ、とても便利べんりです。旅館やホテルのほかに、日帰りで入れるお風呂ふろ(「恵めぐみの湯ゆ」)もあるので、短みじかい時間で温泉おんせんを楽しみたい人にも、おすすめです。東京とうきょうからは、約やく2時間半で着くことができます。
温泉おんせんから一番いちばん近くの磯部いそべ駅
恵めぐみの湯ゆ
磯部いそべ温泉おんせんは小さな温泉おんせん地ですが、美うつくしい自然しぜんとおいしい食べものを楽しみ、温泉おんせんに入って、心と体を休ませるには、最高さいこうの場所ばしょです。
みなさんも日本で最初さいしょの♨♨を見つけに、ちょっと出かけてみませんか。
文:白石誠
写真:白石誠
(2023.1.13)