秋になるとさんまを食べる

　秋になると、スーパーマーケットに行くのが楽しみです。秋に収穫(しゅうかく)するおいしいものを買うことができるからです。秋は、魚や野菜(やさい)、そして果物(くだもの)などがたくさん採(と)れます。収穫(しゅうかく)する量(りょう)が多く、味が良(い)い時期(じき)のものを旬(しゅん)と呼(よ)びます。日本には春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)があります。それぞれの季節(きせつ)に旬(しゅん)のものがあります。秋の旬(しゅん)と言ったら、魚では「さんま」、野菜(やさい)では「松茸(まつたけ)」や「かぼちゃ」、果物(くだもの)なら「柿(かき)」や「梨(なし)」などです。

　多くの人が「さんま」を好(この)みます。現在(げんざい)では冷凍(れいとう)技術(ぎじゅつ)が進歩(しんぽ)したため、他(ほか)の季節(きせつ)でも「さんま」を楽しむことができます。缶詰(かんづめ)になったものもあります。

　けれども、秋の「さんま」は格別(かくべつ)です。魚売り場で「さんま」を見つけると、少し高くても、つい買ってしまいます。家族の喜(よろこ)ぶ顔(かお)が見たいからです。

　夕飯に出すと、家族はこう言います。「あ、もうさんまの季節(きせつ)か～。秋だな」と。さんまを食べなければ、秋が来ないわけではないのに不思議(ふしぎ)です。私たちは秋とさんまをつないで考えているのでしょう。

　さんまは川ではとれません。海にすんでいます。長さはだいたい30センチくらいで、細長(ほそなが)い形(かたち)をしています。おなかは銀色で、背中(せなか)は青い色をしています。新鮮(しんせん)なものは、ピカピカと光り、刀(かたな)のように見えます。

さんまと大根(だいこん)おろし

　さんまはいろいろな調理(ちょうり)方法(ほうほう)があります。醤油(しょうゆ)と砂糖(さとう)で煮(に)るのもおいしいですし、新鮮(しんせん)なさんまであれば、生(なま)で食べたり、お寿司(すし)にしたりしてもおいしいです。

　けれども、我(わ)が家(や)ではさんまと言ったら、何と言っても、塩焼(しおや)きです。それが一番(いちばん)おいしいと、私は思います。

　さんまは料理の準備(じゅんび)も簡単(かんたん)です。他(ほか)の魚はうろこを取(と)ったり、内臓(ないぞう)を取(と)ったり、面倒(めんどう)な手順(てじゅん)を経(へ)なければなりません。ところが、さんまはうろこがなく、内臓(ないぞう)もそのまま食べられます。少し苦(にが)い内臓(ないぞう)をむしろ好(この)む人もいます。

　さんまの焼(や)き方にはいろいろあります。七輪(しちりん)で焼(や)くのがおいしいという人もいれば、炭火(すみび)で焼(や)くのがいいと主張(しゅちょう)する人もいます。家庭(かてい)ではガス・レンジで焼(や)くのが一般的(いっぱんてき)でしょう。

　我(わ)が家(や)のさんまの焼(や)き方を書いてみます。

　買ってきたさんまは、すぐに冷蔵庫(れいぞうこ)に入れ、その日のうちに食べます。新しい方がおいしいからです。焼(や)く前に塩(しお)を振(ふ)ります。魚全体(ぜんたい)にかかるように、少し多めに塩(しお)を振(ふ)ります。

　そして、魚焼(や)き用のグリルに並(なら)べます。この時、重ならないように、注意します。グリルに少し油(あぶら)を塗(ぬ)ってからのせると、きれいに焼(や)けます。

　だいたい８分くらい中火で焼(や)きます。煙(けむり)が出ても気にしません。煙(けむり)が出た方がおいしいからです。そして、熱いうちにいただきます。

　我(わ)が家(や)では、さんまを食べるときは、必(かなら)ず大根(だいこん)おろしと一緒(いっしょ)に食べます。マリアージュと呼(よ)びたいほど、さんまと大根(だいこん)おろしは一緒(いっしょ)です。もっとも、かぼすやレモンをしぼってかける人もいますので、我(わ)が家が特にこだわっているのかもしれません。

お殿様(とのさま)も食べた

　さんまは庶民(しょみん)に人気のある魚です。安いですし、栄養(えいよう)もあります。

　落語(らくご)の題材(だいざい)としても取(と)り上げられています。「目黒(めぐろ)のさんま」という落語(らくご)です。それほど、よく知られた魚ということなのかもしれません。

　落語(らくご)「目黒(めぐろ)のさんま」のあらすじを紹介(しょうかい)します。少し違(ちが)うものもありますが、だいたいは以下のような物語です。

　あるお殿様(とのさま)が鷹狩(たかが)りの途中(とちゅう)に、目黒(めぐろ)の農家(のうか)に立ち寄(よ)りました。その家では、お殿様(とのさま)のために、焼いたさんまを出しました。お殿様(とのさま)はとても喜(よろこ)んで食べました。お城(しろ)に帰ってからも、さんまの味が忘(わす)れられず、「さんまを食べる」と命令(めいれい)します。すると、料理人はお殿様(とのさま)の健康を考えて、蒸(む)して脂(あぶら)を抜(ぬ)いたさんまを出します。料理人はていねいに骨(ほね)をとったため、出来(でき)上がってすぐ食べることもできません。さんまはお殿様(とのさま)のところに行(い)くまでにすっかり冷(さ)めてしまいました。楽しみにしていたお殿様ですが、ひとくち食べ、あまりにまずかったため、「さんまは目黒(めぐろ)に限(かぎ)る」と、言ったというのです。

　目黒(めぐろ)は東京(とうきょう)にある町で、海辺(うみべ)ではありません。ですから、さんまの産地(さんち)ではないのです。それなのに、さんまは目黒(めぐろ)に限(かぎ)るという点(てん)が面白(おもしろ)いのでしょう。さらには、お殿様(とのさま)といえども、食べられないのが、焼(や)きたてのさんまという点も、興味深(きょうみぶか)いといえるでしょう。時は秋、私もさんまを買ってきて、熱(あつ)いうちにいただくことにしましょう。お殿様(とのさま)ではないので、蒸(む)したりしません。最近(さいきん)ではなんと生のさんまをインターネットで取(と)り寄(よ)せることもできるとか…。私はまだインターネットで注文したことはありませんが、いつかためしてみたいと思っています。