してはいけない!箸の使い方
「…では、今日の授業は終わりです。みなさん、さようなら!」
私の名前は黒田しおり。仕事は日本語教師。毎日いろいろな国の学生に日本語を教えている。
―― あー、今日も疲れた。でも明日も授業。これから準備しないと… ――
リー「黒田先生、すみません。ちょっと、いいですか?」
黒田「あ、リーさん。何ですか?」
リー「あのー、箸の使い方を教えていただきたいんですが…。私の国では箸を使いませんから、使い方がわからないんです」
黒田「いいですよ。…え~っと、じゃあ、この絵を見てください。まず箸は、このように持ちます」
リー「わかりました! 先生、どうもありがとうございました。さようなら」
黒田「ちょっと待ってください。まだですよ! それに、たくさん練習しないと、上手になりませんよ。あ、そうだ! じゃあ、今日は少しだけ『箸の悪い使い方』を教えますね」
リー「『悪い使い方』ですか?」
黒田「そうです。『悪い使い方』がわかると、きっと『いい使い方』もわかりますから」
リー「お~! じゃあ、先生、よろしくお願いします!」
悪い使い方① 刺し箸
黒田「これを見てください。これは刺し箸です。箸を食べ物に刺しますから、刺し箸です」
リー「あ、私はこれをしたことがあります。フォークと同じですから、便利です」
黒田「でも、箸はフォークじゃありません。だめですよ」
リー「ふ~ん、そうですか。わかりました」
悪い使い方② 指し箸
黒田「これは指し箸です。箸で人や物を指しますから指し箸です」
リー「え? 先生、さっきのも『さしばし』、これも『さしばし』ですか?」
黒田「そうです。同じ名前ですね。でも漢字が違いますから、意味も違うんですよ」
リー「お~、日本語は難しいですが、面白いですね~」
悪い使い方③ 探り箸
黒田「これは探り箸。箸で、皿の中から自分が好きなものを探していますね」
リー「あ~。私の国は箸を使いませんが、考え方は同じです。これはよくないですね」
悪い使い方④ 立て箸
黒田「これは立て箸です。ご飯に箸を立てるので立て箸です」
リー「先生、これはどうして、してはいけないんですか?」
黒田「これはお葬式のとき、死んだ人にご飯をあげる方法と同じだからですよ」
リー「へ~、そうですか」
悪い使い方⑤ 渡し箸
黒田「次は渡し箸です。皿や茶わんの上に、このように箸を置くことですよ」
リー「えっ! これもだめですか? 食事中、ちょっと休みたいときはどうしますか?」
黒田「えっ、それは…。リーさんの宿題です。来週までに調べてくださいね」
リー「はい、わかりました!」
悪い使い方⑥ 寄せ箸
黒田「それから、箸で、遠くの皿を近くへ持ってきてはいけません。これは寄せ箸と言います」
リー「箸は長いですから、この使い方はとても便利だと思います。でも、手を使わなければならないんですね」
黒田「はい、そうです」
悪い使い方⑦ 舐り箸と噛み箸
黒田「最後に、左は舐り箸、右は噛み箸。この二つも悪い使い方です」
リー「先生、だれがこれをしますか?」
黒田「えっ?」
リー「食べ物はおいしいですが、箸はおいしくないです。どうして箸を食べるか、わかりません」
黒田「ははは、そうですね」
黒田「リーさん、全部覚えましたか?」
リー「う~ん、ちょっと…。難しいですね」
黒田「そうですか。じゃあ、うちへ帰ったら、これ(https://yomujp.com/n4_hashi/)を見てください。もう一度勉強することができますよ。それから『箸の悪い使い方』は、もっとたくさんあります。時間があったら、自分で調べてみてください」
リー「はい、わかりました!」
―― ふ~、疲れた。コーヒーを飲んだら、明日の授業の準備をしよう! ――
リー「先生、今日はありがとうございました。また来週!」
黒田「はい、さようなら。気をつけて!」
―― ん? 「また来週」? あ、今日は金曜日だ!――
文:瀬戸稔彦
イラスト:いらすとや/イラストAC
効果音素材:OtoLogic/効果音ラボ
(2023.1.20)