日本語多読道場 yomujp

老神おいがみ温泉おんせん

世界一のヘビと会える?「神様かみさま」がケガをなおした温泉おんせん

「老神温泉」―――みなさんは、この名前を日本語で何と読むか、わかりますか?

温泉は「おんせん」ですが、前の二文字が、ちょっとむずかしいですね。

ここへ行ったことがない人や、知らない人は、読み方がわからないかもしれません。

つぎの写真を見てください。

答えは「おいがみ」温泉おんせんでした。

「ろうじん温泉おんせんじゃねえで」というのは、「ろうじん温泉おんせんではないよ」という意味です。

まちがって、「ろうじん」温泉おんせんと読む人が、たくさんいるようですね。

たしかに「老」という漢字は「老人ろうじん」の場合、「ろう」で正しいですが、「老いる」(年をる、という意味)という時には「おいる」と読みます。また「かみ」は、「神社じんじゃ」の時には「じん」と発音しますが、「神様かみさま」だと「かみ」です。さらに「老神おいがみ」になると、「かみ」の読み方は「かみ」ではなく、「がみ」にわるのです。

このように、日本語では同じ漢字に、たくさんの読み方があります。また、二つのことばがつながるときに、うしろのことばの発音がわることがあります。たとえば「景色」は「けしき」ですが、前に「ゆき」がついて「雪景色」になると、「ゆきげしき」と読みます。

景色けしき

雪景色ゆきげしき

さて、今回こんかい老神おいがみ温泉おんせんのお話です。「おい」という漢字は、もともとは、まったく別の漢字でした。老神おいがみ温泉おんせんには、温泉おんせんはじめて出た時のお話がつたわっています。むかし、ここの山にいた神様かみさまがヘビになって、ほかの山から来た神様かみさま(ムカデ)とたたかった時、矢を受けてけがをしてしまいます。その時、その地面じめんいたところ、温泉おんせんが出てきて、そのおのおかげで、ヘビのケガはすぐにくなりました。元気になったヘビは、相手あいて神様かみさまともう一度たたかって、山からいだします。つまり「おいがみ」という名前は、かみいだしたという意味の「かみ」からきているのです。「追」と「老」は日本語で同じ「おい」と読むので、土地の名前は、その後、「追神おいがみ」から「老神おいがみ」にわったといわれています。

ヘビ

ムカデ

このお話に出てくるヘビは、老神おいがみ温泉おんせんまもってくれる神様かみさまとして、住民じゅうみんから大切にされています。毎年5月には「大蛇おおへびまつり」があり、みんなで、大きなヘビのかたちをした「みこし」をかたにのせて、まちの中をまわります。「みこし」とは、神様かみさまり物のことです。

つぎの写真を見てください。これが、老神おいがみ温泉おんせんの「みこし」です。

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老神おいがみ温泉おんせんの「みこし」

おどろくことに、長さが108メートルあります。いろいろな世界一を紹介しょうかいする「ギネス世界記録きろく(Guinness World Records)」にも、「もっとも長いまつり用のへび」として、出ているそうです。この「みこし」は、「大蛇おおへびみこし展示館てんじかん」で、いつでも見ることができます。

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大蛇おおへびみこし展示館てんじかん

神様かみさまのケガをなおしたというお話のとおり、老神おいがみ温泉おんせんのおは、キズや、ひふの病気にとてもよくききます。そしてここにはおが出る場所ばしょ源泉げんせん)が8か所あり、同じ温泉おんせんでも少しちがう種類しゅるいのおに入ることができます。

下(左)の写真は「山楽荘さんらくそう」という旅館のお風呂ふろです。建物の外にある「露天風呂ろてんぶろ」はとても広くて、気持ちがよさそうですね。旅館の外には、足だけ温泉おんせんに入れる「あし」もあります。歩いてつかれた時には、入ってみるとよいでしょう。

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露天風呂ろてんぶろ

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足湯あしゆ

また、日帰りで行ける温泉おんせんの中には、食事ができるところもあります。たとえば東明館とうめいかん」では、ギョウザが有名です。お風呂ふろから出た後は、つめたいビールやアイスクリームもおいしいですね。

東明館とうめいかん

ギョウザ

ビールとアイスクリーム

老神おいがみ温泉おんせん群馬県ぐんまけん沼田市ぬまたしにあり、東京からは、電車とバスにるとやく3時間で着きます。すぐ近くには片品川かたしながわという川があり、目の前に山とたにが広がっていて、自然しぜんがとてもゆたかな場所ばしょです。

夏は、まわりをみどりでかこまれ、川の上からながめる「けしき」がとてもきれいです。そして冬になると、「ゆきげしき」が楽しめます。

なつ景色けしき

ふゆ景色けしき

最後さいごに、老神おいがみ温泉おんせんのかわいいキャラクター、「じゃおうくん」を紹介しょうかいしましょう。

じゃおうくん

「じゃおうくん」の名前である「じゃおう」はひらがなですが、漢字ではどう書くか、みなさんはわかるでしょうか?

蛇の王さまで、「蛇王じゃおう」と書きます。「蛇」はヘビのことですが、「蛇王じゃおう」の時は「じゃ」と読むのです。ほかには、水道の「蛇口じゃぐち」という時にも使います。

日本語は本当ほんとうむずかしいですね。それでも、いろいろな日本語の読み方を少しずつ知っていくと、新しい発見があって、温泉おんせんをめぐる旅も、もっと楽しくなるでしょう。

文:白石誠

写真:白石誠/写真AC

イラスト:イラストAC/老神温泉観光協会

(2023.2.17)