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伊香保(いかほ)温泉(おんせん)①】

石段(いしだん)から温泉(おんせん)(なが)れる?「黄金(こがね)」と「白銀(しろがね)」のお()に出会う旅

季節(きせつ)が、冬から春へと()わる時期(じき)です。外はまだ(さむ)いので、温泉(おんせん)に入り、ゆっくりとあたたまりたいですね。今回(こんかい)は、関東(かんとう)で特に有名な温泉(おんせん)地に行ってみましょう。ここの風景(ふうけい)は、みなさんも写真や映像(えいぞう)で一度は見たことがあるかもしれません。

伊香保(いかほ)温泉(おんせん)です。「伊香保」と書いて「いかほ」と読みます。もともとの地名は「イイカオ(好い顔)」とか、「ユカワ(湯川)」だったという話もあるようです。(たし)かに、日本語のひびきがよく()ていますね。ここのお()に入ったら、もっとイイカオになれるかもしれません。

伊香保(いかほ)といえば、「石段(いしだん)」が有名です。石段(いしだん)とは、上りと下りが急な(さか)に、人が通りやすくするため、(いし)でつくった階段(かいだん)のことです。伊香保(いかほ)石段(いしだん)は400年以上も前にできました。13年前の工事で長さが少しのびて、現在(げんざい)一番(いちばん)上まで365(だん)あります。一年の日数(にっすう)(365日)と同じですね。一年中、ここがにぎやかであるように、という意味があるそうです。

それではなぜ、そんなに(むかし)から、伊香保(いかほ)には石段(いしだん)ができたのでしょうか? それは温泉(おんせん)歴史(れきし)関係(かんけい)があります。ここには、1900年以上も前から温泉(おんせん)がわいていました。日本の古い()がのっている「万葉集(まんようしゅう)」の中には、伊香保(いかほ)温泉(おんせん)何回(なんかい)も出てきます。

そのころ、伊香保(いかほ)温泉(おんせん)がわいていた場所(ばしょ)源泉(げんせん))は、石段(いしだん)一番(いちばん)上よりも、もっと(おく)にありました。そのために、源泉(げんせん)から(とお)いところでは、温泉(おんせん)のお()をうまく使うのが(むずか)しかったのです。

伊香保(いかほ)温泉(おんせん)源泉(げんせん)

この問題を解決(かいけつ)したのが、真田(さなだ)昌幸(まさゆき)という人です。昌幸(まさゆき)は、日本の中で戦争(せんそう)(つづ)いていた時代に、(たたか)うことが仕事である「武士(ぶし)」でした。(かれ)は、戦争(せんそう)/rp>でけがをした武士(ぶし)たちをなおすために、伊香保(いかほ)温泉(おんせん)を使うことを考えます。そして源泉(げんせん)に近い(さか)の上から、ずっと下まで通じる石段(いしだん)をつくりました。石段(いしだん)の中には、お()(なが)れる「()おけ」を通して、石段(いしだん)途中(とちゅう)にお()の出口を16か(しょ)もつくったのです。そして(りょう)がわには、武士(ぶし)が住む旅館を建てました。

石段(いしだん)の真ん中を通る「()おけ」

武士(ぶし)の家の(あと)

石段(いしだん)があれば、温泉(おんせん)のお()温度(おんど)が高いまま、多くの場所(ばしょ)(はや)く運ぶことができます。温泉(おんせん)をみんなで分ける「分湯(ぶんとう)」は、こうして始まりました。伊香保(いかほ)温泉(おんせん)は、日本の歴史(れきし)(はじ)めて、人が計画してつくった「温泉(おんせん)(がい)」です。

それから400年がたった今、石段(いしだん)(りょう)がわには、(むかし)から(つづ)く旅館のほかに、みやげもの店、飲食店、子どもが(あそ)ぶことができる場所(ばしょ)などが(なら)んでいます。最近(さいきん)はパン屋も開店し、あまいスイーツが観光(かんこう)(きゃく)に人気です。

石段(いしだん)(りょう)がわには多くのお店がある

石段(いしだん)にあるパン屋

伊香保(いかほ)にはもう一つ、日本で(はじ)めてのものがあります。温泉(おんせん)の名前が入った、茶色の「()の花まんじゅう」です。100年以上も前につくられ、日本で最初(さいしょ)温泉(おんせん)まんじゅうといわれています。石段(いしだん)(がい)では、ほかにも土地の有名な食べ物を売るお店があります。

()の花まんじゅう

群馬県(ぐんまけん)の名物「(たま)こんにゃく

そして、石段(いしだん)途中(とちゅう)には、観光(かんこう)(きゃく)がよく立ち止まって、写真をとっている場所(ばしょ)があります。下の写真をよく見てください。石段(いしだん)に文字が書いてあるでしょう。これは、与謝野晶子(よさのあきこ)という(むかし)の作家がつくった()です。とてもおしゃれですね。

石段(いしだん)(きざ)まれている与謝野晶子(よさのあきこ)()

365(だん)石段(いしだん)を上ったら、伊香保(いかほ)神社(じんじゃ)です。さらに源泉(げんせん)がある方向(ほうこう)に歩くと、途中(とちゅう)で赤色の(はし)が見えてきます。有名なアニメにも出てくる「河鹿(かじか)(ばし)」です。夏は新緑(しんりょく)、秋は紅葉(こうよう)、冬は(ゆき)景色(けしき)が広がります。

源泉(げんせん)に着くと、すぐ(よこ)には「伊香保(いかほ)露天風呂(ろてんぶろ)」があり、料金を(はら)えばお()に入ることができます。自然(しぜん)を近くに(かん)じながら、外で温泉(おんせん)を楽しめる露天風呂(ろてんぶろ)は、少しぜいたくな気分になりますね。来た道を(もど)り、石段(いしだん)をおりていくと、途中(とちゅう)には「石段(いしだん)()」が、また石段(いしだん)の下から10分ぐらい歩いた場所(ばしょ)には「黄金(こがね)()(かん)」があります。
213_N2_いい湯だな⑤伊香保温泉①16

伊香保(いかほ)露天風呂(ろてんぶろ)案内(あんない)パンフレットより)

213_N2_いい湯だな⑤伊香保温泉①17

黄金(こがね)()(かん)の入り口

3か(しょ)とも、温泉(おんせん)のお()は、(むかし)から伊香保(いかほ)でわいている「黄金(こがね)()」です。色は、こがね色に近い茶色で、成分(せいぶん)には鉄分(てつぶん)(Iron)が入っていて、キズや体の(いた)みによく()きます。鉄分(てつぶん)は体をあたためる効果(こうか)もあるので、(さむ)時期(じき)にぴったりですね。

このほかに伊香保(いかほ)には、30年ほど前に見つかった「白銀(しろがね)()」というお()もあります。こちらは色が透明(とうめい)で、「黄金(こがね)()」とは成分(せいぶん)がちがいます。お(はだ)にやさしくて、美容(びよう)(つか)れの回復(かいふく)()く、女性(じょせい)に人気です。

黄金(こがね)()

白銀(しろがね)()

伊香保(いかほ)にある旅館やホテルでは、「黄金(こがね)」か「白銀(しろがね)」、どちらかのお()を使っています。みなさんは、どちらを体験してみたいですか?

旅館の中には、二つのお()を同時に楽しめるところもあります。両方(りょうほう)に入りくらべてみてください。同じ温泉(おんせん)でも、まったく別のお()だということがわかるでしょう。

温泉(おんせん)を中心に、新しいまちがつくられてきた伊香保(いかほ)温泉(おんせん)(うつく)しいお()とともに、石段(いしだん)(なが)れるのは、ゆったりとした時間です。すぐ近くにある、すばらしい自然(しぜん)を体で(かん)じながら、みなさんも伊香保(いかほ)のまちを歩いてみませんか?

文:白石誠

写真:白石誠

(2023.3.17)

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