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『乾草ほしくさの車』
The Hay Wain by John Constable1821, National Gallery, London
この絵(え)は、イギリスを代表(だいひょう)する風景(ふうけい)画家、ジョン・コンスタブル(1776年〜1837年)の『乾草(ほしくさ)の車』です。コンスタブルは、ロンドンの北東にあるサフォーク州(しゅう)に生まれ、若い頃(ころ)サフォーク州(しゅう)やエセックス州(しゅう)の田園風景(でんえんふうけい)をよくスケッチしていました。
この経験(けいけん)で得(え)た風景(ふうけい)が後(のち)の作品の題材(だいざい)(モチーフ:motif)になっています。彼(かれ)は、1799年にロイヤル・アカデミーの付属(ふぞく)美術(びじゅつ)学校に入り、日常生活(にちじょうせいかつ)を描(えが)く風景(ふうけい)画家になろうと決心(けっしん)しました。
ジョン・コンスタブル(1776年〜1837年)
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『乾草(ほしくさ)の車』には、乾草(ほしくさ)をのせた木製(もくせい)の車が3頭(とう)の馬(うま)にひかれて、川を渡(わた)る様子(ようす)が描(えが)かれています。右奥(おく)に広がる低地(ていち)と白い雲(くも)と草や木々(きぎ)の緑(みどり)、目の前の自然(しぜん)が忠実(ちゅうじつ)に表現(ひょうげん)されています。
全体的(ぜんたいてき)に深(ふか)い緑(みどり)や茶色が使われていますが、馬(うま)の鞍(くら)に赤がアクセントとして使われています。
馬(うま)の鞍(くら)
左側(がわ)にはコテージがあり、このコテージは今も残(のこ)っているそうです。スタウア川を挟(はさ)んで右側(がわ)がエセックス州(しゅう)、左側(がわ)がサフォーク州(しゅう)です。彼(かれ)が若(わか)い頃(ころ)に見た風景(ふうけい)もこれに似(に)たものだったかもしれません。
Willy Lott’s Cottage, Flatford
この絵(え)は、6フィート画(six-footers)と呼(よ)ばれるシリーズの一つで、横幅(よこはば)が約(やく)1.8メートルもあるキャンバスに描(えが)かれています。コンスタブルはこの作品のために実物大(じつぶつだい)のスケッチを描(えが)いており、このスケッチは現在(げんざい)もロンドンのビクトリア&アルバート博物館(はくぶつかん)に保存(ほぞん)されているそうです。
『乾草(ほしくさ)の車』は、1821年ロイヤル・アカデミーの展覧会(てんらんかい)に出品(しゅっぴん)されました。残念(ざんねん)ながら、買い手がいませんでしたが、フランスでの評判(ひょうばん)はよく、フランスのシャルル10世(せい)からコンスタブルに金メダルが与(あた)えられました。
当時(とうじ)、ヨーロッパでは「風景画(ふうけいが)」というのは、あまり重要視(じゅうようし)されていませんでしたが、コンスタブルは、ターナー(1775年〜1851年・イギリス)とともに「風景画(ふうけいが)」の地位(ちい)を確立(かくりつ)させることに貢献(こうけん)しました。また、ドラクロワ(1798年〜1863年・フランス)をはじめとする新世代(しんせだい)のフランス人画家に影響(えいきょう)を与(あた)えました。
文:Naoko Ikegami
画像:パブリックドメイン
(2023.10.20)