マンガで使われる「シーン」ってどんな音?
マンガにこのように文字が書いてあることがある
何かの音や話し声が聞こえず、あたりがとても静かなようすを表す語です。でも、音が聞こえないのに「シーン」と表現されるなんて、変だと思いませんか?ほんとうに「シーン」という音が聞こえてくるわけではないのですから。
日本語では、あたりが音も聞こえないほど静かなようすを、古くから、「しいん」「しん」「しんしん」「しんかん」などと表現してきました。「シーン」は「しいん」のことです。「しいん」「しん」は漢字で書かれることはありませんが、「しんしん」は「森々」「深々」、「しんかん」は「深閑」「森閑」と書かれることもありました。いずれも「しん」で共通するので、何か関係があるのかもしれません。
深々とした森
マンガでこの「シーン」という語を使ったのは、手塚治虫の『新世界ルルー』というマンガが最初だと言われています。手塚治虫(1928~1989年)は、日本でストーリーのあるマンガや、テレビのアニメーションを広めた人です。代表作に『鉄腕アトム』『火の鳥』などがあります。
日本のマンガにはこの「シーン」のほかにも、ものの音や声を表した語や、ある状態を表した語がたくさん使われています。このような語を「オノマトペ」と呼びます。「オノマトペ」というのはフランス語のonomatopéeからです。日本語では擬音語、または擬声語、擬態語と言いますが、最近は「オノマトペ」という言い方がかなり広まっています。日本では、マンガだけでなく、小説でも、また会話の中でも「オノマトペ」がさかんに使われています。新しい「オノマトペ」も作られるので、辞典にのっていない語の方が多いくらいです。
マンガで使われたオノマトペは、絵と合わせて使うことによって、読む人に強い印象を与えるようにしています。中には画面いっぱいに太い字で「オノマトペ」を書いたり、画面からはみ出して書いたりすることもあります。また、その文字も活字ではなく手で書くなどして、いろいろ考えて表現しています。
いろいろなフォントで書かれたオノマトペ
マンガで使われる「オノマトペ」には、もちろん辞典にのっている語も使われています。「ガンガン」「ガタガタ」「バン」「ワクワク」「ドキドキ」などの語です。
でも、辞典にはのっていない語もたくさん使われています。「バキャ」「バコーン」「ドフッ」「グゲッ」などです。それぞれの語がどういう意味なのか考えてみてください。ただ、マンガと一緒にこうした語を見ると、何となく意味がわかるかもしれません。
マンガで使われているオノマトペには、日本人の私が聞いたことも見たこともない語がたくさんあります。マンガ家が自分で考えた、その場面だけに合わせたオノマトペもありそうです。でも、面白いものがたくさんあります。日本のマンガを読む機会があったら、どんなオノマトペを使っているか、ぜひさがしてみてください。
文:神永曉
写真:写真AC
イラスト:イラストAC
(2024.1.9)
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