『乾草の車』
ジョン・コンスタブル(1776年〜1837年)
『乾草の車』には、乾草をのせた木製の車が3頭の馬にひかれて、川を渡る様子が描かれています。右奥に広がる低地と白い雲と草や木々の緑、目の前の自然が忠実に表現されています。
全体的に深い緑や茶色が使われていますが、馬の鞍に赤がアクセントとして使われています。
馬の鞍
左側にはコテージがあり、このコテージは今も残っているそうです。スタウア川を挟んで右側がエセックス州、左側がサフォーク州です。彼が若い頃に見た風景もこれに似たものだったかもしれません。
この絵は、6フィート画(six-footers)と呼ばれるシリーズの一つで、横幅が約1.8メートルもあるキャンバスに描かれています。コンスタブルはこの作品のために実物大のスケッチを描いており、このスケッチは現在もロンドンのビクトリア&アルバート博物館に保存されているそうです。
『乾草の車』は、1821年ロイヤル・アカデミーの展覧会に出品されました。残念ながら、買い手がいませんでしたが、フランスでの評判はよく、フランスのシャルル10世からコンスタブルに金メダルが与えられました。
当時、ヨーロッパでは「風景画」というのは、あまり重要視されていませんでしたが、コンスタブルは、ターナー(1775年〜1851年・イギリス)とともに「風景画」の地位を確立させることに貢献しました。また、ドラクロワ(1798年〜1863年・フランス)をはじめとする新世代のフランス人画家に影響を与えました。
文:Naoko Ikegami
画像:パブリックドメイン
(2023.10.20)
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