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おせち料理

わあ、(はな)やかで豪華(ごうか)ですね。これは、おせち料理といって、新年を(いわ)ってお正月に食べる料理です。海のものや山のもの、いろいろな食材(しょくざい)が入った、一年に一度のぜいたくなごちそうです。おせち料理に入っている食材(しょくざい)には、それぞれに意味があります。

食べておいしい、知って楽しい、おせち料理の世界を(さぐ)ってみましょう。

「これは、いったい何?」と思った人もいるかもしれません。これは「(かず)()」といって、「にしん」という魚の(たまご)に、しょうゆやみりんなどで味をつけたものです。かむと、(たまご)のつぶが(かん)じられて、楽しいです。「にしん」は卵が多いことから、子孫繁栄(しそんはんえい)、つまり子や(まご)がたくさん生まれ、家族がずっと(つづ)いていくように、と(ねが)って、おせち料理に入れると言われています。また、にしんと二親(にしん)は同じ音であることから、夫婦円満(ふうふえんまん)の意味もあるようです。
食べたことがある人もいるでしょうか。これは「黒豆(くろまめ)」といって、黒大豆(くろだいず)砂糖(さとう)やしょうゆで(あま)()たものです。つやがあって、きれいですね。「まめ」はもともと、「健康(けんこう)丈夫(じょうぶ)」という意味のことばで、今年も一年、まめに、つまり元気で()らせますように、という気持ちを()めて、黒豆(くろまめ)を食べるそうです。また、黒には悪いものを()けるという意味もあるといいます。
これは「田作(たづく)り」といいます。()した「カタクチイワシ」という魚をフライパンで()って、砂糖(さとう)やしょうゆなどで作った甘辛(あまから)いたれをかけて()ぜます。「魚なのに、田を作る?」そう思った人も多いことでしょう。(むかし)、イワシを田んぼの肥料(ひりょう)にしたところ、おいしい(こめ)がたくさん収穫(しゅうかく)できたことから、イワシはいい田を作るということで、田作(たづく)りと()ばれるようになったそうです。田作(たづく)りには、豊作(ほうさく)、つまり(こめ)などがたくさんとれるように、という(ねが)いが()められているんですね。
これは「紅白(こうはく)かまぼこ」です。かまぼこは、うどんにのっていたり、コンビニなどのお弁当(べんとう)に入っていたりするので、食べたことがある人も少なくないでしょう。さて、かまぼこの(かたち)は何に見えますか。日が(のぼ)っていくところに見えませんか。日の出の(かたち)()ていることから、かまぼこは新年の象徴(しょうちょう)とされています。また、紅白(こうはく)という色は、お正月だけではなく、お(いわ)(ごと)のときによく使われる色ですが、(こう/あか)はめでたいこと、白は(きよ)らかなことを意味していると言われています。
ロールケーキのようで、おいしそうですね。これは「伊達巻(だてまき)」といいます。(たまご)(こま)かくした魚の()()ぜて()き、それを()いたものです。この()いた(かたち)に意味があるのですが、なぜでしょうか。下の写真を見てください。これは、()や文字などを書いて()いた「巻物(まきもの)」というもので、古い本の形です。この巻物(まきもの)のイメージから、文化(ぶんか)発展(はってん)し、知識(ちしき)()えるように、という(ねが)いを()めて、伊達巻(だてまき)を食べるそうです。これを食べたら、(あたま)がよくなるかもしれませんね。

この(まわ)りの黒いものは何でしょう。「おにぎりに使うのりみたいだけど、ちょっと(あつ)いみたい…」という(こえ)が聞こえてきそうです。これは昆布(こんぶ)、そしてこの料理は魚などを昆布(こんぶ)()いて、しょうゆやみりんで味をつけて()た「昆布巻(こぶまき)」というものです。昆布(こんぶ)は「こぶ」と読むと、「(よろこ)ぶ」を連想(れんそう)することから、縁起(えんぎ)がいいものとされています。

(かず)()」の親である「にしん」を()いた昆布巻(こぶまき)もありますが、にしんに昆布(こんぶ)大変(たいへん)おめでたい、お正月にぴったりの料理と言えますね。

これ以外にも、たくさんの食材(しょくざい)があります。(たと)えば、煮物(にもの)に使う蓮根(れんこん)は、(あな)が開いていることから、先が見通せる、という意味があり、また、色鮮(いろあざ)やかな海老(えび)は、(こし)()がるまで元気で長生きできるようにと、長寿(ちょうじゅ)の願いを込めておせち料理に入れられます。おせち料理の中で、気になる食材(しょくざい)があったら、その由来(ゆらい)を調べてみると、新たな発見があるかもしれません。

(つぎ)のお正月は楽しみが()えそうですね。

文:新階由紀子
写真:フォトAC
(2021.12.19)

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