これは私のうちの猫「シロ」、体の色が白いから「シロ」だ。
6年前の雨の日、近くの公園で拾った。
猫は人より年を取るのが早い。
猫の6歳は、人の40歳とだいたい同じだそうだ。
だから今、私とシロはだいたい同じ年だ。
私の名前は、佐藤年男。40歳、独身。
北海道の小さな町で生まれて、大学生のときから東京に住んでいる。
大学を卒業してから、東京にある会社でずっと働いている。
給料も安いし、ときどき残業もしなければならない。
でも、ここでは好きな仕事ができるし、悪い会社ではないと思う。
仕事の日は毎朝6時に起きる。
それから洗濯をして、掃除をして、ごみを出して、朝ご飯を作って、シャワーを浴びて…。
シロは…
たぶん、また寝ているだろう。
会社で午前9時から午後6時ごろまで働く。
12時から1時まで昼休みだが、忙しい日は15分ぐらいしか休めない。
コンビニで買ったお弁当を食べたら、また仕事だ。
メール、電話、書類の山、長い会議…。
そして、6時になったら会社を出て、うちへ帰る。
駅まで歩いて、電車に乗って、バスに乗って、また1時間。
「はぁ、今日も疲れた」
「シロ、ただいま」
「ニャー!」
シロは一日何もしていないのに、たくさん食べる。
そして、またすぐに寝る。
私はこれから自分の晩ご飯を作って、食器を洗って、お風呂に入って…。
あ、明日の会議の準備もしないと。
ああ、私も猫になりたい。
参考:大森裕子著『ねこのずかん』白泉社
文:瀬戸稔彦
写真:写真AC
(2022.7.12)