フリーマーケット

日曜日に近所の公園でフリーマーケットが行われるそうだ。
「行ってみようかな。特に欲しいものはないけど、ひまだし、何かいいものが買えるかもしれないし…」
日曜日。公園には大勢の人が来ていて、いろいろな物が売られていた。
家具や食器。

スポーツの道具。

服やかばん。


見ているだけでも楽しい。
「あっ、なつかしい!」

私は子どものとき大好きだったマンガの本を見つけた。
「それ、ちょっと古いけど、おもしろいですよ」
売っていたのは私より少し若い女の子だった。

「ええ。子どものとき、お年玉で買って読みました。
でも、宿題をしないで読んでいたので、母に捨てられちゃって…」

「そうですか。私もそのマンガ好きなんですが、今度の連休に旅行に行くお金が足りないので、売ろうと思って」

「私は連休にどこも行かないで、これを読もうかな。いくらですか」
「350円です」
「えーっ? ちょっと高いよ」
15年以上前のマンガだし、あまりきれいじゃないし、もう少し安くなるはずだと思った。
「でも、ここにあるマンガは、全部もう本屋でもネットでもなかなか見つけられないですよ」
「一冊200円だったら…、この10冊買うんだけど」
その10冊は、全部読んだことがある。でも、その中に『ロボたろう』といっしょによく読んでいたマンガもあったし、ぜひもう一度読んでみたかった。
「え? 10冊まとめて? うーん、一冊250円なら…」
女の子は計算機を見ながら言った。


「OK。250円で!」
「ありがとうございます。いっしょにこの大きいエコバッグもいかがですか。マンガを入れて持って帰るのにちょうどいいし、スーパーで買い物するとき便利でしょう?」

私はマンガをエコバッグに入れて持って帰った。
連休が始まった。
私はまず、一番好きだった『ロボたろう』から読み始めた。

読んでいる途中で、紙が汚れているページを見つけた。
「あ、これって…」
昔、ジュースを飲みながら読んでいて、汚してしまったページと同じページの同じ場所だ。
「もしかしたら、これは、私が持っていた本かもしれない。でも、私のは母が捨ててしまったし、あのころ住んでいたのはここから遠い町だし…」
私は母に電話で聞いてみた。
母はなかなか思い出せないようだったけど、
「そういえば、そんなことがあったね…。まだ怒っているの?」
と言った。


「ううん、怒ってないよ。でも、あのマンガ本当に捨てちゃったの?」
「うん。確か、市役所の『本のリサイクル』の日に出したわよ」
『本のリサイクル』で集めた本は、もうだれも読まなそうなものはトイレットペーパーとか段ボールにするけど、まだ読める本は学校とか図書館に送るそうだ。

「じゃ、やっぱり、これは私のだ!」
私の『ロボたろう』は、トイレットペーパーにはされないで、いろいろな町でいろいろな人に読まれたのだろう。

そして、あの女の子が読んで、また私のところへもどってきた。
買った10冊の中には『ロボたろう』のほかにも私が持っていたのが3冊ぐらいあった。ちょっと信じられないけど、うれしい。
「このマンガどうしよう? このままずっと持っていようかな。だれかにあげようかな。フリーマーケットで売ろうかな。でも、その前にもう一回読もう!」
文:牧友美子
画像:イラストAC/シルエットAC/イラストエイト
(2025.10.14)