ボールはどこへ?

ぼくたちは、よく近所の公園でサッカーをして遊んでいる。野球はグローブとかバットとか、いろいろ必要だけど、サッカーならボールが一つあったらできる。試合じゃないからそんなに広くなくてもいいし、大勢いなくても大丈夫。

最近はみんな塾とか習い事で毎日は来られないから、二人とか三人しかいない日もある。
ぼくも火曜日と金曜日は塾に行くから遊べない。
今日は、ぼく、ケンタ、ユウキ、ダイゴの四人が集まった。
「じゃ、今日は2対2でやろう」
「じゃんけん、ぽん」

「あいこでしょ」

ぼくたちは、ぼくとユウキ、ケンタとダイゴの2チームにわかれた。

「OK! じゃ、行くよ!」
まず、ユウキがぼくのほうにボールをけった。
ぼくはそのボールをドリブルしながら、
ゴールに向かって走った。

でも、すぐにケンタにボールを取られてしまった。
ケンタはダイゴにパスしようとしたけど、ユウキがダイゴより先にボールを取った。
また、ぼくたちにチャンスがきた。
「ユウキ、こっちこっち!」
ぼくはユウキに向かって言った。
ユウキはぼくのほうにボールをけった。
でも、ぼくが取るのをダイゴがじゃました。
ダイゴはケンタにパスして、「ケンタ、ゴールだ!」と言った。

ケンタは「おうっ」と言いながら、
ゴールに向かってボールをけった。
ボールは高く上がった。
「あ、いけない、強くけりすぎた」
ちょうど太陽と同じ方向だったから、
ぼくたちはボールが見えなくなった。

ボールはたぶん、公園のすみに落ちたのだろう。
「あーあ」
ダイゴが走ってボールを取りに行った。
でも、ダイゴはなかなか戻って来なかった。
「おーい、ダイゴ、早くボール持って来いよ」

ダイゴはぼくたちのところへ走って戻って来たけど、
ボールは持っていなかった。
「ボール、ないよ。もしかしたら公園の外に落ちたのかもしれない」
ダイゴが言った。
ぼくたちは、公園の外にボールをさがしに行った。

公園の近くの道路や家、コンビニの駐車場…、いろいろなところをさがしたけど、
ボールはどこにもなかった。
「おかしいな」
「どこかにあるはずだよ」
ずいぶん遠くまでさがしに行ったけど、
ボールは見つからなかった。


「どうしよう。あのボールは誕生日に買ってもらったばかりなのに…。なくしたらお父さんにしかられちゃう」
ユウキは泣きそうになった。ボールはユウキのなのだ。
「こんなに遠くまで、ボールは飛んで来ないと思うよ」
「やっぱり公園の中だと思うな」
「もう一度公園をさがそう」
ぼくたちは、公園に戻った。
「あれ?」
さっき、ケンタがボールをけったところに
サッカーボールがあった。


「さがしに行く前はなかったのに!」
「でも、これは、ぼくのだ!」
ユウキはボールに書いてある名前をみんなに見せた。
「本当だ」
「よかったね」
だれかがボールを拾ってここに持ってきてくれたようだ。
「たぶん、ぼくがけったボールが地球を一回まわって、またここに落ちたんだと思うな」
とケンタが言った。ぼくたちは「えーっ」と言って笑った。
それから、ぼくたちは、またサッカーを始めた。

文:牧友美子
画像:イラストAC/みんちりえ/パブリックドメインQ
(2025.4.25)