電車に乗ると、窓からいろいろな景色が見える。
道を歩く人やたくさんの店を見るのは楽しい。
毎日見ている店の中に何の店か、わからない店が一つある。
たぶん、食べ物の店だと思う。その店の右は喫茶店だし、左はラーメン屋だし…。
店のドアの上に文字が書いてあるけど、電車と店の間に木があるので、全部読むことができない。読める文字は二つだけ。
「 や き 」
「◯◯やき」? 「やき◯◯」?
◯◯は何? 店の名前 ? どんな食べ物?
毎日 電車 に乗 りながら考 えている。
…たこやき、おこのみやき、たいやき、
やきいも、やきとり、やきにく…?
考えていると、おなかがすく。ああ、何の店か知りたい。
あの店に行きたい。行って食べてみたい!
私は時計を見た。11時半だった。これは、チャンスだと思った。
今日は、あの店でお昼ごはんを食べられるかもしれない。
店のドアの上の文字は、『やきもの』だった。
やきものって…?
ドアの前に立つと、自動ドアが開いた。
ちょっとがっかりしたけど、私はすてきな皿を見つけて、一枚買った。今日の夜ごはんは、自分で作った料理をこの皿にのせて食べよう。あ、でもその前に、お昼ごはんを食べなきゃ。
私は急いで店を出た。
文:牧友美子
イラスト:Loose Drawing.com
写真:パブリックドメインQ/フリー素材.com
(2022.12.9)