スリッパ

あなたの家には何足スリッパがあるでしょうか。私の家には、部屋用が家族の人数分、トイレ用が1足、全部で5足のスリッパがあります。
家の中でスリッパをはかない人もいますが、病院や旅館、ホテルなど、家の外でもスリッパが用意されている場所は多いです。ですから、「スリッパを使ったことがない」という人は、ほとんどいないでしょう。


さて、家の中でスリッパを使う習慣ですが、実は日本が始まりです。今から200年ほど前、日本にヨーロッパの人々が大勢来るようになりました。江戸時代の終わりから明治時代にかけて、日本は外国に国を開き(開国)、たくさんの外国人がやって来たのです。ところが、外国の人は「日本ではくつを脱ぐ」という習慣があると知りませんでした。そのため、家や建物に入るときに、くつのままで入り、トラブルになることが多かったそうです。そこで、日本人が「くつをはいたまま使えるはきもの」を作り、外国人に使ってもらいました。これが、スリッパの始まりだと言われています。


この履物は当時の本に「スリップルズ」と紹介されています。英語の「slippers」が日本人の耳にはこのように聞こえたのでしょう。その後、一部の日本人もスリップルズを使うようになり、やがてくつを脱いで、素足でスリッパをはくようになりました。
こうして、スリッパは日本の生活に広がり、今では世界のいろいろな場所で使われるようになりました。スリッパは、日本の文化と外国のであいから生まれた、とてもおもしろい履物なのです。
文:桂美穂
画像:イラストAC/Adobe Stock
(2025.10.21)