おしぼり
外国からの観光客が日本に来てびっくりすることの一つは、「おしぼり」だそうです。「レストランなどで食事をするとき、手を洗いに行かなくてもいいように、おしぼりが用意されている。しかも、それを無料で出してもらえるのがすごい!」ということなのです。
おしぼりは、日本ではとても昔から使われてきました。今から1300年以上前に書かれた『古事記』という日本で最も古い歴史の本にも、「家に客が来たときに水でぬらしてしぼった布を渡して手や足をふいてもらった」と書いてあるそうです。また、江戸時代(1603年~1868年)の絵にも旅をしている人が宿泊所で手や足をおしぼりでふいている様子が描かれています。日本は湿度が高い気候なので、いつでも清潔にしておくべきだという考え方が一般的でした。そして、日本人の多くは「おもてなし」をするのは当然だという考えを持っていました。このような国民性から、おしぼりが生まれ、普及したのではないでしょうか。
東京都立中央図書館所蔵
1960年ごろまで、店で出されるおしぼりは、それぞれの店で用意していました。でも、客の数が増えると店で布をぬらして、しぼって、使い終わった布を洗って…、ということが大変になったので、おしぼりを貸すビジネスが生まれました。今では病院や美容院、タクシーなど食べ物の店以外でも使うところが増えてきました。そして、布だけでなく紙のおしぼりや、いいにおいがするおしぼりなど、いろいろなタイプのものが作られています。
日本ではおしぼりのサービスは普通にあるものですが、おしぼりを使う習慣がない国もあります。おしぼりのビジネスは、その国の気候や、国民性によって、独自のビジネスが生まれるいい例なのではないでしょうか。
桂美穂
画像:写真AC/イラストAC/TOKYOアーカイブ
(2024.11.22)