ジブリアニメを見たことがありますか。ジブリアニメとは、スタジオジブリ(STUDIO GHIBLIINC.)が作ったアニメのことです。ジブリアニメは、日本だけでなく、いろいろな国で人気があります。
今日は、ジブリアニメとジェンダーについて、二人の大学の先生の意見を読んでみましょう。
藤森かよ子先生は、文学や政治を研究しています。藤森先生によると、たくさんのジブリアニメの中で、ヒットした作品の多くは主人公が少女、つまり女の子だそうです。そしてこの少女は「救世主」であり「戦う少女」なのです。「救世主」とは、「世界を助ける人、守る人」という意味です。
風の谷のナウシカ(1984)場面写真
千と千尋の神隠し(2001)場面写真
藤森先生は、次のように続けます。救世主の少女や、戦う少女は、ジブリアニメだけではなくて、日本のアニメの特徴でもあります。「リボンの騎士(Princess Knight)」「セーラームーン」「サクラ大戦(Sakura War)」「新世紀エヴァンゲリオン(Neon Genesis EVANGELION)」「少女革命ウテナ(Revolutionary Girl Utena)」なども、戦う/救世主の少女が登場します。ヨーロッパ、アメリカ、中国などの神話や映画で戦うのは大人の女の人で、女の子ではありません。
藤森先生は、アニメを作っている人や見ている人は、理想の母親の姿を、戦う/救世主の少女に重ねていると考えました。つまり「母親に守られたい。でも、コントロールされたくない」という二つの気持ちの表れが、戦う/救世主の少女として描かれ、受け入れられていると言っています。
ジブリアニメの主人公の少女について、あなたはどう思いますか。
次に、菊田琢也先生の意見を読んでみましょう。菊田先生の専門はファッションです。
魔女の宅急便(1989)場面写真
でも、旅に出るとき、黒い服を着ます。その後、ずっとこの服を着たままです。
魔女の宅急便(1989)場面写真
菊田先生は「キキはなぜ黒いワンピースを着るのか」の理由について考えました。
菊田先生によると、ファッションは、自分だけではなくて、社会が決めます。
時間、場所、一緒にいる人などによって、着る服は変わるのです。
そして、服を着ることを通じて、エスニシティ(Ethnicity)、ネイション(Nation)、宗教、仕事などと一緒に「ジェンダー(Gender)も着る」のだと言います。
映画の中では何度も、キキと他の女の人の服が比べられます。
例えば、買い物に出たキキが、町を歩く女の子たちと自分の服を見て「もうちょっとすてきな服ならよかったのにね」と言うシーンがあります。そして、魚のパイを届けるシーンでも、きれいなピンクのドレスを着ている女の子と、黒い服を着ているキキには、大きな違いがあります。菊田先生は、他の女の子は、社会、つまり、その時間や場所に合った服を着ているのに、キキはそうではないと考えています。
魔女の宅急便(1989)場面写真
菊田先生は、キキが黒い服を着ているのは、「これから、どうやって社会に合わせて、自分を変えていくのか」という、この映画のテーマを表しているからだと言っています。キキは、いろいろな女の子と会って、その人たちを通して、今の「わたし」を知って、成長していきます。
あなたが好きなジブリアニメのキャラクターは、どんな服を着ていますか。それは、何を表しているのでしょうか。ぜひ考えてみてくださいね。
参考資料:
菊田琢也(2021)「キキはなぜ黒いワンピースを着るのか スタジオジブリとファッション」『学苑』p.84-87, 昭和女子大学近代文化研究所
https://researchmap.jp/takuya_kikuta/published_papers/32492445
藤森かよ子(2006)「長久手・星ヶ丘 両キャンパスセミナー:宮崎アニメにみる 日本のジェンダーの光と闇」『ジェンダー・女性学研究所 第22号ニュースレター』p.1-2, 愛知淑徳大学
https://www.aasa.ac.jp/institution/igws/newsletter/pdf/22.pdf
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