日本語多読道場 yomujp
お酒(さけ)を飲むときに食べる料理を何というか?
お酒(さけ)を飲むときに食べる料理を、「つまみ」と言ったり、「あて」と言ったり、「さかな」と言ったりします。違(ちが)うものなのでしょうか?
「つまみ」? 「あて」? 「さかな」?
答えは、ほとんど同じです。ただ、それぞれのもとの意味が違(ちが)います。
「つまみ」は、はしや指(ゆび)などで取(と)って食べるという意味の動詞(どうし)「つまむ」が、名詞(めいし)になった語です。つまんで食べられるような簡単(かんたん)な食べ物という意味です。これから、お酒(さけ)を飲むときに食べる簡単(かんたん)な料理、という意味で使われるようになりました。
はしや指(ゆび)でつまむ
「あて」は、もともと大阪(おおさか)や京都(きょうと)などで使われていた語です。以前は、東京(とうきょう)でこの語を使う人はあまりいませんでしたが、最近(さいきん)は、東京(とうきょう)でも「あて」と言う人が増(ふ)えています。
「あて」は、大阪(おおさか)や京都(きょうと)などでは江戸(えど)時代(じだい)(1603〜1868年)から使われていたようです。ただ、なぜ「あて」と言うのか、よくわかりません。食べ物を集めることを「あてる」と言っていたので、それと関係(かんけい)があるのかもしれません。「さかな」は、語としておもしろい歴史(れきし)があります。もちろん、海や川にいる生き物の「さかな」と深(ふか)い関係(かんけい)があります。でも、お酒(さけ)を飲むときに食べる料理は魚料理が多いから、その料理を「さかな」と言うようになったわけではないのです。
どちらがもともとの「さかな」?
)
実(じつ)は、その逆(ぎゃく)です。
つまり、海や川にいる「さかな」は、今は「さかな」と言いますが、昔(むかし)は別の名前だったのです。「うお」「いお」です。
「さかな」という語も、古くから使われていましたが、「さかな」はお酒(さけ)を飲むときに食べる物の意味でした。つまり、現在(げんざい)の酒(さけ)の「さかな」と同じ意味の方が先だったのです。そして「さかな」として食べられていたものは、海や川にいる「さかな」だけではありません。肉や野菜(やさい)、木(き)の実(み)などがありました。
どれも「さかな」
「さかな」という語は、「さか」は「さけ(酒)」という意味で、「な」は「菜」でご飯と一緒(いっしょ)に食べるおかずという意味です。酒(さけ)を飲むときに食べる料理ということだったのです。
「さかな」という語が、海や川にいる「さかな」の意味で使われるようになったのは、江戸(えど)時代(じだい)以降(いこう)のようです。江戸(えど)(今の東京(とうきょう))を中心とした地域(ちいき)で、「さかな」を海や川にいる「さかな」の意味で使うようになり、やがてそれが京都(きょうと)や大阪(おおさか)などにも伝(つた)わっていきました。それと同時に、海や川にいる「さかな」の意味の「うお」「いお」という語は使われなくなってしまったのです。今でも、「さかな」ではなく「うお」「いお」と言っている地域(ちいき)はありますが、ほとんどの地域(ちいき)では「さかな」と言っています。
ところで、お酒(さけ)を飲むときに食べる料理を意味する「さかな」は、漢字ではふつう「肴」と書きます。「肴」という漢字は、もともとは海や川にいるさかなや、動物の肉で作った料理という意味です。海や川にいる「さかな」は、「魚」と書きます。このことからも、同じように「さかな」と言っても、昔(むかし)は別のものだったことがわかります。
肴(さかな)
魚(さかな)
文:神永曉
写真:フォトAC
(2022.9.20)