日本語多読道場 yomujp
「下手」「上手」は読み方が違(ちが)うと別の語になる!?
日本語には、同じ漢字の熟語でも、読み方が違(ちが)うと別の意味になるものがあります。
そこで、今回(こんかい)はそのような語を集めてみました。意味がどのように違(ちが)うのか、一緒(いっしょ)に考えてみましょう。
「下手」は読み方が3つあります。「したて」「しもて」「へた」です。
「したて」は、位置(いち)が下の方であることをいいます。とくに、風が吹(ふ)いていく方(風下(かざしも))、川の水が流(なが)れていく方(川下(かわしも))のことをいいます。
「しもて」は、「したて」と同じように川が流(なが)れていく方や、舞台(ぶたい)で客席(きゃくせき)から見た左側(ひだりがわ)をいいます。
「へた」と読むと、やり方がうまくないという意味です。「運転がへただ」のように使います。
「下手」に対(たい)する語が「上手」です。この語も読み方が3つあります。「うわて」「かみて」「じょうず」です。
「うわて」は、位置(いち)が上の方であることをいいます。とくに、風が吹(ふ)いてくる方(風上(かざかみ))、川の水が流(なが)れてくる方(川上(かわかみ))のことをいいます。
「かみて」は、「うわて」と同じように川の水が流(なが)れてくる方や、舞台(ぶたい)で客席(きゃくせき)から見た右側(みぎがわ)をいいます。
「じょうず」と読むと、やり方がうまいという意味です。「じょうずに字を書く」のように使います。
「きんせい」と読むと、太陽(たいよう)のまわりを回(まわ)っている惑星(わくせい)のことです。
惑星(わくせい)は太陽(たいよう)のまわりを回(まわ)っている星(ほし)のこと。金星(きんせい)は太陽(たいよう)から2番目(ばんめ)に近い。
「きんぼし」は、相撲(すもう)で使います。下のくらいの相撲(すもう)とりがいちばん上のくらいの横綱(よこづな)に勝(か)つことです。相撲(すもう)だけでなく、弱(よわ)い選手(せんしゅ)が強い選手(せんしゅ)に、弱(よわ)いチームが強いチームに勝(か)ったときにも使います。
相撲(すもう)には強さによって地位(ちい)が異(こと)なる。横綱(よこづな)はいちばん上。
「生物」も読み方は3通りあります。
「せいぶつ」は、動物や植物(しょくぶつ)などのことです。
「いきもの」は、生きている、生命(せいめい)があるものということです。
「なまもの」は、煮(に)たり焼(や)いたりしていない、なまのものということです。たとえば、刺(さ)し身(み)は「なまもの」です。
読み方は違(ちが)ってもほとんど同じものを表しますが、少しだけ違(ちが)う意味で使われる語もあります。たとえば「工場」がそうです。
「工場」は「こうば」「こうじょう」と読みますが、どう読むかで意味が少し違(ちが)います。どちらも、大きな機械(きかい)や器具(きぐ)を用意して、製品(せいひん)や品物を作る所(ところ)をいいます。ただ、「こうば」と読むと「こうじょう」にくらべて小さく、機械(きかい)などの設備(せつび)もあまり多くはないという印象(いんしょう)を受(う)けます。
これは「こうじょう」? 「こうば」?
このように同じ漢字で書いても、読み方が違(ちが)うと別の意味になる語は注意が必要(ひつよう)です。
文:神永曉
イラスト:イラストAC
(2022.11.25)