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日本のシカ

奈良(なら)奈良(なら)公園(こうえん)という大きな公園(こうえん)があります。町の中にあるとても広い公園(こうえん)です。公園(こうえん)の中には、東大寺(とうだいじ)興福寺(こうふくじ)といったお(てら)や、春日大社(かすがたいしゃ)という神社(じんじゃ)があります。また、若草山(わかくさやま)春日山(かすがやま)三笠山(みかさやま)といったあまり高くはないのですが山もあります。

この公園(こうえん)にはたくさんのシカが、人間をこわがらずに()らしています。その(かず)は1,000(とう)以上もいるそうです。これらのシカは、ニホンジカとよばれる種類(しゅるい)です。日本にはほかにも、北海道に住むエゾシカ、屋久島(やくしま)に住むヤクシカなどのシカがいます。

奈良(なら)公園(こうえん)のシカ

ニホンジカはふつう山にいますが、奈良(なら)公園(こうえん)のように町の中にいるシカはとてもめずらしいのです。なぜ奈良(なら)公園(こうえん)にたくさんのシカがいるのかというと、公園(こうえん)の中にある春日大社(かすがたいしゃ)に、この神社(じんじゃ)(かみ)さまが白いシカに()ってやってきて、公園(こうえん)にいるシカはその子孫(しそん)だという伝説(でんせつ)があるからです。その伝説(でんせつ)が正しいかどうかはわかりませんが、奈良(なら)時代(710年〜784年)に春日大社(かすがたいしゃ)のまわりにシカがいたという記録(きろく)(のこ)っています。

シカは特に秋に、オスがメスを(もと)めて大きな(こえ)でなきます。このなき(ごえ)のことが和歌(わか)の中でよまれました。その和歌(わか)では、秋なので木の()が赤や黄色(きいろ)になったもみじともよく()()わされています。このもみじとシカの()()わせは、絵画(かいが)工芸品(こうげいひん)などにも使われました。「花札(はなふだ)」というゲームで使うカードがありますが、それにもシカともみじを()()わせた()のカードがあります。

花札(はなふだ)のカード。もみじとシカの()()わせも見られる

奈良(なら)公園(こうえん)では観光客(かんこうきゃく)がシカにあたえるための「しかせんべい」と()ばれるシカ用のおかしが売られています。シカにあたえるものですから人間は食べられません。公園(こうえん)の中にはこの「しかせんべい」を売っているところがあちこちにあります。「しかせんべい」を買うとシカたちはすぐに集まってきます。でも奈良(なら)公園(こうえん)のシカは人間になれていますが、イヌやネコのようにかわれているわけではないので、「しかせんべい」をあたえるときは注意が必要(ひつよう)です。

しかせんべいを食べるシカ

子どものシカの背中(せなか)()には白い(てん)があります。これを「かのこまだら」「かのこ」といいます。「まだら」はちがった色がところどころにまじっていたり、色にこい部分とうすい部分があったりすることをいいます。このシカの()の白い(てん)のように()めたもようがあります。これを「かのこしぼり」といいます。「かのこしぼり」は着物などに使われます。また、この「かのこしぼり」のように見えるということで、「かのこもち」とよばれるお菓子(かし)もあります。

かのこまだら
かのこしぼり
かのこもち

日本の古い(にわ)には、一定(いってい)のあいだをおいてコーンといういい音を出す道具(どうぐ)()かれています。「しかおどし」「ししおどし」といいます。これは(ふと)いタケのつつを真ん中あたりで回転(かいてん)するようにし、そのつつに水がたまるようにしたものです。水がいっぱいにたまるとかたむいて中の水が(なが)れ出すため、中がからになったつつが(いきお)いよく元の位置(いち)にもどり、つつのおしりの部分(ぶぶん)(いし)()たっていい音を出すのです。これはもともとは(にわ)にしのびこんだシカやイノシシをおどろかせて、()い出すためのものでした。でも今は、(にわ)のふんいきを()すようにするために()かれています。

ししおどし

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文:神永曉

画像:写真AC

(2025.8.19)

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