日本にはむかし、「にんじゃ」とよばれる人たちがいました。戦っている相手の国や、敵がいる場所のようすや秘密を、相手に見つからないように調べた人たちです。漢字で「忍者」と書きます。「忍」は、見つからないようにするという意味です。「者」は何かをする人という意味です。「にんじゃ」はいろいろな技術を使って相手のようすを調べたり戦ったりしますが、それを「忍術」と言います。
忍者
「にんじゃ」は、日本にさむらい(武士)がいた時代に活躍しました。ただ、このような人たちを「にんじゃ」とよぶようになったのは、現代になってからです。それまでは「しのびのもの」「しのび」などと言っていました。「しのびのもの」は漢字で書くと「忍びの者」です。つまり「忍(びの)者」の「忍」をニン、「者」をジャと読んだのが「にんじゃ」なのです。
「にんじゃ」は男だけでなく女もいました。女の「にんじゃ」は「くのいち」ともよばれていました。「女」という漢字は、「く」「ノ」「一」に分解できるからです。
今でも「にんじゃ」の子孫だと言っている人たちがいます。「にんじゃ」には、いろいろな集団がありましたが、とくに甲賀流、伊賀流とよばれる「にんじゃ」の集団が有名です。
甲賀は現在の滋賀県甲賀市、伊賀は三重県伊賀市ですが、となりにあります。ここに「にんじゃ」の子孫だという人や、「にんじゃ」の研究をしている人がたくさんいるのです。そしてどちらにも「にんじゃ」を紹介した博物館もあります。
「にんじゃ」は夜に行動することが多いので、動きやすい黒い服を着ます。顔も黒い布でかくします。「にんじゃ」であることが知られないように、顔つきや服装を変えることもとくいでした。
黒い服を着て顔も黒い布でかくす
「にんじゃ」が使う「忍術」は、集団によってちがいがあります。その中で、木遁・火遁・土遁・金遁・水遁の術は有名です。「遁」はかくれるという意味です。「木遁」は木を使ってかくれる術を言います。「火遁」は「火」の中にはいってかくれる術です。「土遁」は土の中にかくれる術です。「金遁」は金属を使ってかくれる術ですが、音の出る金属をたたいたり、お金をまいたりしている間にかくれる術のようです。「水遁」は水の中にかくれる術です。どれも、しっかりと訓練しないと、危険がせまったときすぐには使えない術のような気がします。
木遁
火遁
土遁
「にんじゃ」の武器として有名なものに、「しゅりけん(手裏剣)」があります。「しゅりけん」は「にんじゃ」だけでなく、さむらいも使いました。「しゅり(手裏)」とは手の中という意味です。「しゅりけん」は手に持って、離れたところにいる敵にめがけて投げる武器を言います。小さな刀のようなものもありますが、「にんじゃ」が使った「しゅりけん」は、十の字のような形をした「しゅりけん」が有名です。私も「しゅりけん」を投げてみたことがありますが、映画などのようにうまくささりませんでした。「にんじゃ」になるには、とてもたいへんだったようです。
しゅりけん
文:神永曉
画像:写真AC/イラストAC
(2023.10.24)