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ネコのことわざ

ネコが()き、という人も多いと思います。私の家にも今はもういませんが、17年生きたネコがいました。

日本のネコは、奈良(なら)時代(じだい)(710~784年)のころに、大陸(たいりく)からつれてこられました。仏教(ぶっきょう)のたいせつなお(きょう)をネズミがかじるので、それから(まも)るためにつれてこられたといわれています。ネコはもともと日本にいた動物ではないのです。

ネコ
)

(きょう)

ネコをなぜ「ねこ」というのか、よくわかっていません。ネコはニャーニャーとかミャーミャーなどとなきますが、そのなき(ごえ)に「こ」の()いたものだという(せつ)があります。「こ」は、そのものにしたしみや愛情(あいじょう)をこめたときに使う語です。

ほかにも、「ネ」は「ねる(()る)」の「ね」からだという(せつ)や、「ネズミ」の「ネ」からだという(せつ)もあります。たしかにネコはよくねていますね。すべてのネコがそうだというわけではありませんが、ネズミもつかまえます。

日本にきたネコは、すぐに人間にかわいがられるようになりました。それは、ことばの世界で、ネコを使ったことわざがたくさんあることからもわかります。

そのような、ネコを使ったことわざをいくつか紹介(しょうかい)しましょう。

ねこにかつおぶし

「かつおぶし」は、カツオという魚の肉から作ったもので、日本料理では味をおいしくするためのとてもだいじなものです。そして、ネコもこの「かつおぶし」が大好(だいす)きです。そのため、「ねこにかつおぶし」は、大好(だいす)きな「かつおぶし」をネコのそばに()くと、すぐに食べられてしまうということから、大好(だいす)きなものをそばに()くと、よくないことが起きるという意味で使われます。

ねこに小判(こばん)

小判(こばん)

小判(こばん)」は、江戸(えど)時代(じだい)に使われた金貨(きんか)(きん)でできたお(かね))です。小判(こばん)一枚(いちまい)でもとても価値(かち)の高いものでした。そのため、そのような価値(かち)の高いものをネコにあたえても、何の反応(はんのう)効果(こうか)もないということです。さらに、どんな貴重(きちょう)なものでも、その価値(かち)がわからない者にあたえては、何の(やく)にも立たないという意味でも使われます。

ねこの()()りたい

ネコでもいいから(たす)けてほしいという意味です。とても(いそが)しくて、仕事を助けてくれる人がほしいときに使います。「ネコでもいいから」なんて、ネコには失礼(しつれい)ですよね。でもたしかに、ネコはあまり仕事の(やく)には立ちません。

ねこの(くび)(すず)()ける

(すず)をつけたネコ

このことわざは、「イソップ物語」から生まれたことわざです。「イソップ物語」は古代ギリシアの動物などを主人公(しゅじんこう)にして、何かの教えや批判(ひはん)をこめた物語集です。ネズミたちが集まって、ネコの来るのがすぐわかるように、ネコの(くび)(すず)をつけようと相談(そうだん)します。でも、ネコをこわがって、(すず)をつけに行くネズミはいなかったという話です。これから、あれこれと議論(ぎろん)をしても、実行(じっこう)するときになると、だれがやるか()まらないという意味です。考えはよくてもだれも実行(じっこう)できず、議論(ぎろん)だけで終わってしまうことも言います。

ねこを(かぶ)

もともとの性質(せいしつ)をかくして、おとなしそうに見せることを言います。ネコはおとなしそうに見えるけれども、ほんとうは乱暴(らんぼう)性質(せいしつ)をかくしているというのです。ネコにとってはこれもひどい評価ですね。知っていながら知らないふりをするという意味でも使われます。

ネコを使ったことわざはほかにもたくさんあります。ネコは(むかし)から人間の近くにいたので、こうしたことわざが数多(かずおお)く生まれたのでしょう。

文:神永曉

画像:写真AC/イラストAC

(2023.10.13)

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