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こいのぼり

5月が近くなると、日本では魚の(かたち)をした(はた)があちこちでかざられるようになります。地方に行くと、とても大きい魚の(はた)も見られます。この(はた)を、「こいのぼり」といいます。「こい」は、(いけ)や川にすむ魚のコイのことです。

こいのぼり)

コイ)

この「こいのぼり」は、5月5日の「端午(たんご)節句(せっく)」のためにかざります。「端午(たんご)」の「(たん)」ははじめという意味です。「午」は「五(5)」のことです。毎月5の日は5日、15日、25日とありますが、最初(さいしょ)の5の日という意味です。そして特に5月5日のことを言います。「節句(せっく)」は、一年の中で区切(くぎ)りとなる日で、この日にお(いわ)いをします。3月3日の(もも)節句(せっく)(ひなまつり)、7月7日の七夕(たなばた)なども有名です。

5月5日になぜコイの(はた)をかざるのでしょうか。それは、その日は男の子の出世(立派(りっぱ)地位(ちい)()くこと)を(ねが)ったお(まつ)りだったからです。コイの(はた)をかざるのは、中国の伝説(でんせつ)によります。中国の黄河(こうが)という大きな川をのぼったコイが、竜門(りゅうもん)という(なが)れの急な場所(ばしょ)()えてその先までのぼることができると、(りゅう)になれるという伝説(でんせつ)です。コイが(りゅう)になるのを出世と考えたのです。

このことから、男の子のいる家ではコイの(はた)「こいのぼり」をかざるようになりました。かざる場所(ばしょ)は、ふつうは家の外ですが、家の中にかざることもあります。こいのぼりの色は、大きいコイは黒、それよりも少し小さいコイは赤、そしてさらに小さいコイは青、(みどり)などで、その地方や家によって色は(ちが)います。

コイが(たき)をのぼる

家の外にかざられたこいのぼり

5月5日の端午(たんご)節句(せっく)には、こいのぼりのほかに、いさましい(よろい)(かぶと)(かたな)、むかしの武士(ぶし)(たたか)いのときのすがたをした人形(にんぎょう)などをかざります。子どもに出世してほしいという(ねが)いをこめるのと同時に、健康(けんこう)(そだ)ってほしいという(ねが)いもこめられています。

またこの日は、ショウブという植物(しょくぶつ)()()かべたお風呂(ふろ)に入る習慣(しゅうかん)もあります。これは、ショウブが病気を起こす悪い気を()ってくれるといわれているからです。また、ショウブは同じショウブと読む、「尚武」「勝負」と関係(かんけい)があると考えられました。「尚武(しょうぶ)」は武道(ぶどう)をだいじなものと考えること、「勝負(しょうぶ)」は、()()けを()めるために(あらそ)うことをいいます。

(よろい)(かぶと)

ショウブが入ったお風呂(ふろ)

この日に食べるものも、(わす)れてはいけません。「ちまき」とよばれているものです。これは(こめ)(こな)をササなどの()でまいて、先がとがった(かたち)にしてむしたおもちです。

「かしわもち」は、あんをはさんだおもちを、カシワという木の()でつつんだものです。おもちの中のあんは、アズキからつくるあんと、おみそでつくるあんのものがあります。私は、おみそのあんの「かしわもち」が()きです。

ちまきとかしわもち


)

現在(げんざい)、5月5日は「こどもの日」といって、男の子だけのお(まつ)りではなくなりましたが、こうしたお(いわ)いのしかたは今でも(のこ)っています。4月から5月にかけて、川や(いけ)、広場の上に(つな)(よこ)にはり、その(つな)に何百、何千というたくさんのこいのぼりをかざってお(まつ)りをするところもあります。ぜったいに見る価値(かち)があります。

文:神永曉

写真:写真AC

イラスト:イラストAC

(2023.5.2)