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ほんとうはおそろしいのに、なぜか日本人に(あい)される「かっぱ」

人間のような姿(すがた)をしているのに、人間とはまったくちがっていて、どういうものなのかよくわからない生き物を「ようかい」と言います。漢字で書くと「妖怪(ようかい)」です。「ようかい」はすべて人間が考え出したものですが、いろいろな姿(すがた)をしています。目が一つしかない子どもだったり、(くび)が長くのびる女性(じょせい)だったり、ほんとうに(かぞ)えきれないほどの「ようかい」が日本にはいるのです。実際(じっさい)には存在(そんざい)していませんが。

いろいろな「ようかい」

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今回(こんかい)は、その「ようかい」の中で特に有名な、そして日本人が大好(だいす)きな「かっぱ」の話をします。「かっぱ」は漢字では「河童(かっぱ)」と書きます。「河」は川のことで、「童」は子どもという意味の漢字です。つまり、川に住む子どもということです。

実際(じっさい)存在(そんざい)しない生き物ですから、「かっぱ」の姿(すがた)地域(ちいき)によってちがいます。でも多くは、(つぎ)のような姿(すがた)をしていると考えられています。

からだの大きさは、4、5(さい)の子どもくらいです。口の先がとがっていて、背中(せなか)にはカメのようなこうらがあります。手と足の(ゆび)の間には水かきといううすい(かわ)のようなものがあり、これを使って水の中をじょうずに(およ)ぐことができます。(あたま)には(さら)とよばれるくぼみ(へこんでいる部分(ぶぶん))があります。このくぼみには少しだけ水が入っていて、この水があるうちは「かっぱ」は(りく)の上でも元気に動き(まわ)ることができます。ただ、この水がなくなると死んでしまいます。なんだか、少しだけゆかいなようかいです。

かっぱ


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でもようかいですから、おそろしいところもあります。川で(あそ)ぶ子どもをおぼれさせて死なせたり、(うま)を川へ()きずり()んだりするというのです。肛門(こうもん)(お(しり)(あな))に手を入れ、尻子玉(しりこだま)()きぬいたり、生き()(生きている動物の())を()ったりするとも言われています。「尻子玉(しりこだま)」は、肛門(こうもん)(ところ)にあるとされた想像上(そうぞうじょう)(たま)です。

かっぱの()きな食べ物はキュウリです。なぜキュウリが()きなのかはよくわかりません。でも、かっぱはキュウリが()きだと考えられているので、(ぎゃく)にキュウリのことを「かっぱ」と言うようになりました。キュウリを中に入れて、すし用のごはんとのりでまいたものを「かっぱ」または「かっぱまき」と言うのは、それから生まれたよび名なのです。

きゅうり

かっぱまき

かっぱは、手と足の(ゆび)の間にある水かきでじょうずに(およ)げますが、たまに川に(なが)されることもあるというのです。これから「かっぱの川(なが)れ」という語が生まれました。どんな名人と言われる人でも、場合(ばあい)によっては自分の得意(とくい)なことで思いがけない失敗(しっぱい)をするという意味です。同じような意味で、「サルも木から()ちる」とも言います。

「かっぱが(さら)の水をこぼしたよう」という言い方もあります。(たの)みにするものを(うしな)って、ぼうぜんとしているさまをいいます。かっぱは(あたま)の上にあるという(さら)に水がなくなると、まったく動けなくなってしまうのです。

「かっぱに(しり)をぬかれたよう」は、気がぬけて、ぼんやりしているさまをいいます。かっぱは水におぼれて死んだ人の肛門(こうもん)から、尻子玉(しりこだま)をぬき()るという言い(つた)えがあるところから、こう言うのです。「かっぱに尻子玉(しりこだま)をぬかれる」とも言います。

かっぱに尻子玉(しりこだま)をぬかれる

「へのかっぱ」あるいは「かっぱのへ」などという語もあります。物事がかんたんにできること、()るに足りないことという意味で使います。「へ」は肛門(こうもん)から出るガス、つまりおならのことです。

日本人はかっぱが大好(だいす)きなので、ことばの世界でもこのようにかっぱが使われているのです。

文:神永曉

画像:写真AC/イラストAC

(2024.5.24)

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