人間のような姿をしているのに、人間とはまったくちがっていて、どういうものなのかよくわからない生き物を「ようかい」と言います。漢字で書くと「妖怪」です。「ようかい」はすべて人間が考え出したものですが、いろいろな姿をしています。目が一つしかない子どもだったり、首が長くのびる女性だったり、ほんとうに数えきれないほどの「ようかい」が日本にはいるのです。実際には存在していませんが。
いろいろな「ようかい」
今回は、その「ようかい」の中で特に有名な、そして日本人が大好きな「かっぱ」の話をします。「かっぱ」は漢字では「河童」と書きます。「河」は川のことで、「童」は子どもという意味の漢字です。つまり、川に住む子どもということです。
実際に存在しない生き物ですから、「かっぱ」の姿は地域によってちがいます。でも多くは、次のような姿をしていると考えられています。
かっぱ
でもようかいですから、おそろしいところもあります。川で遊ぶ子どもをおぼれさせて死なせたり、馬を川へ引きずり込んだりするというのです。肛門(お尻の穴)に手を入れ、尻子玉を引きぬいたり、生き血(生きている動物の血)を吸ったりするとも言われています。「尻子玉」は、肛門の所にあるとされた想像上の玉です。
かっぱの好きな食べ物はキュウリです。なぜキュウリが好きなのかはよくわかりません。でも、かっぱはキュウリが好きだと考えられているので、逆にキュウリのことを「かっぱ」と言うようになりました。キュウリを中に入れて、すし用のごはんとのりでまいたものを「かっぱ」または「かっぱまき」と言うのは、それから生まれたよび名なのです。
きゅうり
かっぱまき
かっぱは、手と足の指の間にある水かきでじょうずに泳げますが、たまに川に流されることもあるというのです。これから「かっぱの川流れ」という語が生まれました。どんな名人と言われる人でも、場合によっては自分の得意なことで思いがけない失敗をするという意味です。同じような意味で、「サルも木から落ちる」とも言います。
「かっぱが皿の水をこぼしたよう」という言い方もあります。頼みにするものを失って、ぼうぜんとしているさまをいいます。かっぱは頭の上にあるという皿に水がなくなると、まったく動けなくなってしまうのです。
「かっぱに尻をぬかれたよう」は、気がぬけて、ぼんやりしているさまをいいます。かっぱは水におぼれて死んだ人の肛門から、尻子玉をぬき取るという言い伝えがあるところから、こう言うのです。「かっぱに尻子玉をぬかれる」とも言います。
かっぱに尻子玉をぬかれる
「へのかっぱ」あるいは「かっぱのへ」などという語もあります。物事がかんたんにできること、取るに足りないことという意味で使います。「へ」は肛門から出るガス、つまりおならのことです。
日本人はかっぱが大好きなので、ことばの世界でもこのようにかっぱが使われているのです。
文:神永曉
画像:写真AC/イラストAC
(2024.5.24)
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