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半出来温泉(はんできおんせん)

半出来(はんでき)」な温泉(おんせん)?で混浴(こんよく)紅葉(こうよう)を楽しむ

(あつ)さも、もうすぐ終わりを(むか)えます。空気が少しずつ(すず)しくなってくると、外へ出かけるのがとても気持ちよくなりますね。秋の楽しみといえば、温泉(おんせん)紅葉(こうよう)です。今回(こんかい)は、そんな時期(じき)にぴったりの場所(ばしょ)へ行ってみることにしましょう。

東京からは電車で4時間以上と少し(とお)いですが、JRの駅から歩いてすぐ行くことができて便利(べんり)なのが、今回(こんかい)紹介(しょうかい)する「半出来(はんでき)温泉(おんせん)」です。実際(じっさい)、この温泉(おんせん)は、駅からは車で直接行きにくい場所(ばしょ)にあるので、歩いて行くほうが速いかもしれません。いったいどんなところなのでしょうか? さっそく行ってみましょう。

駅から半出来(はんでき)温泉(おんせん)までの道

JR吾妻(あがつま)(せん)の「袋倉(ふくろぐら)」駅で電車を()り、小さな歩道を歩いていくと、(はたけ)があらわれ、その先に木でできた階段(かいだん)が見えてきます。この階段(かいだん)を上って、右に()がりましょう。

つり(ばし)

つり(ばし)途中(とちゅう)からの風景(ふうけい)

目の前に大きな(はし)がかかっています。これは、つり(ばし)といって、川のこちら(がわ)とむこう(がわ)の間をつないだロープでつるした(はし)です。歩く部分(ぶぶん)には(いた)しかないので、(すす)むにつれて(はし)はゆらゆらとゆれます。最初(さいしょ)はちょっと(こわ)いですが、手すりにつかまりながら気をつけて(わた)りましょう。(はし)途中(とちゅう)から見える風景(ふうけい)は、とてもきれいです。駅から目的(もくてき)場所(ばしょ)までは、10分以内(いない)に着くことができます。

半出来(はんでき)温泉(おんせん)看板(かんばん)

登嬉和荘(ときわそう)

半出来(はんでき)温泉(おんせん)」の看板(かんばん)が見えます。温泉(おんせん)といっても「登喜和(ときわ)(そう)」という木造(もくぞう)二階(にかい)建ての旅館が一軒(いっけん)だけで、まるで自分の家に帰ってきたようなふんいきです。ところで、この「半出来(はんでき)」という温泉(おんせん)の名前には、どんな意味があるのか、不思議(ふしぎ)に思った人もいることでしょう。「出来(でき)」は日本語で、何かができあがるとか、○○することができる、という意味ですが、では「半出来(はんでき)」はどうでしょうか?

「半」は「半分」という意味なので、「半出来(はんでき)」は半分しかできない、つまり、できあがりが不完全(ふかんぜん)なものという意味になります。(じつ)は「半出来(はんでき)温泉(おんせん)」の「半出来(はんでき)」は地名で、このあたりの土地がやせていて、(はたけ)に食べ物を()えてもなかなか(そだ)たなかったので、こういう名前がついたそうです。もともとはあまりいい意味ではなかった言葉(ことば)が、そのまま土地や温泉(おんせん)の名前に使われているのは、おもしろいですね。さっそく、温泉(おんせん)に入ってみましょう。

温泉(おんせん)の入口

内湯(うちゆ)

入口は男性(だんせい)女性(じょせい)で分かれていて、きれいな日本画の「のれん」がかかっていますね。中に入るとすぐに、お風呂(ふろ)が見えるでしょう。屋根(やね)がついた建物の中にあるので、「内湯(うちゆ)」と()びます。内湯(うちゆ)のお風呂(ふろ)も入ると気持ちがいいですが、ここの温泉(おんせん)にはもう一つ、とてもめずらしいお風呂(ふろ)があるのです。内湯(うちゆ)から外に出てみましょう。

混浴(こんよく)露天(ろてん)風呂(ぶろ)

混浴(こんよく)露天(ろてん)風呂(ぶろ)」と書いてありますね。「露天(ろてん)風呂(ぶろ)」は建物の外にあるお風呂(ふろ)のことで、「混浴(こんよく)」というのは、男性(だんせい)女性(じょせい)区別(くべつ)がなく、どちらも同じお風呂(ふろ)に入ることができるという意味です。外国の温泉(おんせん)ではみんなが水着を着て中に入りますが、これに()ていますね。日本では混浴(こんよく)場合(ばあい)場所(ばしょ)によって入浴(にゅうよく)のルールがちがいますが、この温泉(おんせん)ではタオルを()につけて入ることもできます。(むかし)から(つづ)いている日本の温泉(おんせん)では、今も混浴(こんよく)習慣(しゅうかん)(のこ)っているところがあります。

そして、この露天(ろてん)風呂(ぶろ)で、お()に入りながらながめる外の景色(けしき)は、ほかではなかなか見ることができないほど、素晴(すば)らしいものです。夏の時期(じき)には、(みどり)(ゆた)かな山の風景(ふうけい)が広がります。来るときに(わた)ってきたあのつり(ばし)も、(とお)くに見えるでしょう。そして秋になると、このあたりをいろいろな色で()める(うつく)しい紅葉(こうよう)風景(ふうけい)を楽しむことができるのです。

混浴(こんよく)露天(ろてん)風呂(ぶろ)から見える景色(けしき)

(はん)出来(でき)温泉(おんせん)(かざ)ってある書

(はん)出来(でき)温泉(おんせん)は旅館なので()まることもできますが、料金を(はら)えば温泉(おんせん)だけ「日帰り」で入ることができます。体の(いた)みや、胃腸(いちょう)効果(こうか)があるお()で、近くの人たちがよく利用(りよう)しています。着替(きが)える場所(ばしょ)には、前にここへ来た政治家(せいじか)が書いた書や、読むと笑ってしまうような()(がみ)(かざ)ってあります。

(はん)出来(でき)」な土地と言われながらも、ここには山と川に(かこ)まれたすばらしい自然(しぜん)があり、人々を元気にする温泉(おんせん)が今日もわいています。「(はん)出来(でき)」の「半」という漢字には、日本語で「はん」のほかに「なか」という読み方がありますが、群馬県(ぐんまけん)地域(ちいき)言葉(ことば)(方言)でも、これに近い「なっから(なから)」という言葉(ことば)があって、これは「とても…」という意味だそうです。「(はん)出来(でき)温泉(おんせん)」は 実際(じっさい)には、とても出来がよい、「上出来」な温泉(おんせん)といえるでしょう。

文:白石誠

写真:白石誠

(2023.10.3)

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