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言語には、品詞ひんしと呼ばれるものがあります。語を文法的ぶんぽうてきはたらきによって分類ぶんるいしたものです。たとえば日本語では、名詞めいし代名詞だいめいし動詞どうし形容詞けいようし副詞 ふくし接続詞せつぞくしなどです。そして、その語のことをもっとくわしく知りたいと思ったときには、品詞ひんしは何かということが重要じゅうようになります。国語辞典こくごじてんでは、その語の品詞ひんししめしていますが、どの辞典じてんでも「動詞どうし」としめされている語がとても少ないのです。
たとえば、『新選国語辞典しんせんこくごじてん 』(だいぱん)という辞典じてんでは、それぞれの品詞ひんしごとの語数ごすうしめされています。それによると、この辞典じてんの語はやく94,000語ありますが、動詞どうし は6,829語しかないのです。

日本語は動詞どうしが少ない言語なのでしょうか?

いえいえ、そのようなことはありません。「言う」「見る」「食べる」のような、品詞ひんし が「動詞どうし」としめされた語のほかに、「会話する」「発見 はっけんする」「食事する」のように、「する」がついて動詞どうしとして使われる語もあります。辞典じてんでは、「会話」「発見はっけん」「食事」の品詞ひんし 名詞めいしですが、これらの語に「~スル」と書いて、動詞 どうしとして使われることをしめしている辞典 じてんもあります。じつはこのようなかくれた動詞どうしかずはとても多いのです。

そして、日本人はこの「~スル」を使って、いろいろな語を 動詞どうしにしてしまいます。

たとえば、最近さいきんはあまり使われなくなってきましたが、「タピる」という語がはやりました。「タピオカ」というやわらかいつぶを入れた、ココナッツなどを使ったデザートが人気だったときに、それを飲んだり食べたりすることを、「タピる」と言っていたのです。

タピる

たような語に、「チンする」というのもあります。電子でんしレンジで食べものをあたためるという意味です。これは、あたため終わったことを知らせる音から生まれました。でも、この語ってちょっとおもしろいと思いませんか。最近さいきん電子でんしレンジは、あたため終わったあと「チン」とはらないと思います。私の家の電子でんしレンジも「ピッピ」です。昔の電子でんしレンジは「チン」とったので、それがそのままのこってしまったのです。

この、名詞めいし動詞どうしにするのは、最近さいきんのことではなく、むかしの人も同じようなことをしていました。ご飯にあついお茶をかけて食べる「お茶漬ちゃづけ」という食べものを知っていますか。江戸時代えどじだいの人はこれを動詞どうしにしてしまったのです。それも「お茶漬ちゃづけする」ではなく、「ちゃづ(ず)る」と言っていたのです。もちろん意味はお茶漬ちゃづけを食べるということです。「ちゃづける」でもなく「ちゃづる」と言っていたところもおもしろいと思います。この「ちゃづる」は、江戸時代えどじだい小説しょうせつに出てきます。ちょっとかっこよく言うために使っている場面ばめんです。

この「~スル」のかたちで作られた動詞どうしは、ほかにもたくさんあります。

文:神永曉

イラスト:Adobe Stock

(2022.4.15)

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