関東 と関西の料理の違い
一つの国の中でも育った所が少し違うだけで文化的な地域差が生まれます。それは自分の地域に対するプライドや他の地域に対する競争心という形で現れます。アメリカなら北部と南部、あるいは東海岸、西海岸、オーストラリアならビクトリア州とクイーンズランド州、イギリスならそれぞれの四つの地域など、どの国でも地域差があります。中国も北部と南部では食材も調味料も大きく違います。日本では東京を中心とした関東と大阪を中心とした関西という分け方がよく使われ、その違いは食文化にも顕著に現れています。
関東と関西の食文化の違いを最もよく表しているのは「出汁」と「醤油」でしょう。現在はどちらも使うようになりましたが、歴史的には、関西は
昆布出汁が中心で、関東はかつお出汁が中心でした。昆布は北の冷たい海で育つ海藻です。室町時代から江戸時代の始めまでは、北海道で採れた昆布を日本海を通る船で、現在の福井県に輸送し、その後、琵琶湖を通り最後は陸路で京都まで運びました。その結果、京都では昆布から取った出汁を使った京料理の味が確立していきました。昆布出汁は味がまろやかなので、京料理もその味を生かした味付けが施されています。一方、カツオは太平洋で獲れる魚で、その身を加工したかつお節が太平洋側で作られるようになり、江戸で広まっていきました。かつお出汁は昆布出汁に比べると風味が強いのが特徴です。その後は全国で両方の出汁が使われるようになっていきました。現在では「合わせ出汁」といって、昆布とかつお節の両方から出汁をとってうま味を強調したものもよく使われます。
昆布
かつお
節
醤油は日本の食生活にとって最も大切な発酵調味料です。大豆と小麦に種麹(コウジカビの胞子)を加えて麹を作り、塩水を加えて仕込み、6ヶ月から1年以上寝かせます。すると、コウジカビ、酵母、乳酸菌などの働きで、発酵が進み、醤油ができます。大豆と小麦で作る醤油だけでなく、大豆100%で作る醤油もあります。
醤油
醤油の原形は8世紀に中国から伝えられ、その後、日本独自の発酵調味料としてまず味噌が発達しました。味噌を作る行程の途中で出る汁を取り出したものが醤油のはじまりです。これが、現在の「たまり醤油」と呼ばれるものの原形です。
17世紀の江戸時代初期に兵庫県(関西)と千葉県(関東)で少し違った二種類の 醤油が作られるようになりました。醤油は最初関西での生産量が多く、関東に運ばれていましたが、江戸時代後期には関東でも生産量が増えました。どちらも大豆と小麦の麹を塩水と混ぜて発酵させて作りますが、関西の醤油は色が薄く、あっさりとした風味に仕上げたので「うすくち醤油」と呼ばれました。一方、関東の醤油は色が濃く、醤油の風味が強かったので 「こいくち醤油」と呼ばれるようになりました。ただし、醤油の濃い薄いはあくまでも色の濃淡で、塩分はどちらもあまり変わりません。
うすくち醤油
こいくち醤油