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歌舞伎(かぶき)の化粧(けしょう)
今回(こんかい)は歌舞伎(かぶき)の特徴(とくちょう)の一つである化粧(けしょう)をご紹介(しょうかい)します。歌舞伎(かぶき)は役(やく)によって化粧(けしょう)の方法(ほうほう)が異(こと)なります。歌舞伎(かぶき)ならではの独特(どくとく)な色のつかい方や描(か)き方に関心(かんしん)を持つ方も多いです。
その中でも、特に有名なのが「隈取(くまどり)」と呼(よ)ばれる化粧法(けしょうほう)です。
肌(はだ)に塗(ぬ)られた白に赤・青・茶色・黒が加(くわ)わることで、さまざまな表情(ひょうじょう)を作り出しています。簡素(かんそ)で、力強く、一目で役(やく)の心情(しんじょう)が見る側(がわ)に伝(つた)わってきます。歌舞伎(かぶき)役者(やくしゃ)は、昔(むかし)も今も、メイク専門(せんもん)のプロに頼(たの)むのではなく、自分で化粧(けしょう)をします。鏡(かがみ)に向(む)かう時間のなかで、少しずつ心が役(やく)に近づき、舞台(ぶたい)に立つ準備(じゅんび)が整(ととの)います。
ところで、役者(やくしゃ)の肌(はだ)が白く塗(ぬ)られるのは、なぜだと思いますか。今から考えると、やや不自然(ふしぜん)な感(かん)じがするかもしれません。実(じつ)は、それには理由(りゆう)があります。
旧金比羅大芝居(きゅうこんぴらおおしばい)(金丸座(かなまるざ))
四国(しこく)・香川県(かがわけん)にある金丸座(かなまるざ)は、昔(むかし)の雰囲気(ふんいき)が残(のこ)っている歌舞伎(かぶき)小屋(ごや)の一つで、見学も可能(かのう)です。ここを実際(じっさい)に訪(たず)ねてみると、中に入るなり、まず気づくのが「暗(くら)さ」です。そうです。江戸(えど)時代(じだい)には電気がありませんでした。電気がなければ、昼間でも中は暗(くら)く感(かん)じます。夜の暗(くら)さは一層(いっそう)深(ふか)いものです。このため、役者(やくしゃ)を目立たせる工夫(くふう)として化粧(けしょう)の「白」がありました。肌(はだ)が白ければ白いほど、観客(かんきゃく)の目を引(ひ)くことができるわけですね。ただ、同じ「白」でも今と昔(むかし)とでは、観客(かんきゃく)には違(ちが)って見えたことでしょう。限(かぎ)られた光(ひかり)やロウソクを通して、「白」は今よりもずっと美(うつく)しく輝(かがや)いて江戸(えど)時代(じだい)の人々(ひとびと)の目に映(うつ)ったのではないでしょうか。このように、当時(とうじ)の人々(ひとびと)になったつもりで、さまざまなことを想像(そうぞう)しながら舞台(ぶたい)を鑑賞(かんしょう)するのも楽しいものです。
今回(こんかい)は、歌舞伎(かぶき)における化粧(けしょう)についてご紹介(しょうかい)しました。
次回(じかい)は、化粧(けしょう)以外にも役(やく)の心情(しんじょう)を感(かん)じることのできる歌舞伎(かぶき)の魅力(みりょく)についてお伝(つた)えしたいと思います。
文:岩瀬ありさ写真:写真ACイラスト:イラストAC(2023.4.4)