日本語多読道場 yomujp
歌舞伎(かぶき)の魅力(みりょく)
皆(みな)さんは歌舞伎(かぶき)をご存知(ぞんじ)ですか。歌舞伎(かぶき)は、今から約(やく)400年前に誕生(たんじょう)したと言われる「歌」「舞(まい)(踊(おど)り)」「演技(えんぎ)」による総合(そうごう)芸術(げいじゅつ)です。江戸(えど)時代(じだい)(1603-1868年)、歌舞伎(かぶき)は娯楽(ごらく)の多様(たよう)な現代(げんだい)と異(こと)なり、限(かぎ)られた娯楽(ごらく)の一つとして、当時(とうじ)の人々に大きな影響力(えいきょうりょく)を与(あた)えたと言われています。作者・役者(やくしゃ)・観客(かんきゃく)によって作り上げられてきた歌舞伎(かぶき)には、日本人の物事の考え方、振(ふ)る舞(ま)い、言語(げんご)表現(ひょうげん)など当時(とうじ)の声が反映(はんえい)されています。繰(く)り返(かえ)し上演(じょうえん)されてきた演目(えんもく)(プログラム)を現代(げんだい)の皆(みな)さんが鑑賞(かんしょう)するとき、何かしら日本人の考え方やコミュニケーションのあり方につながる発見があることでしょう。
歌舞伎(かぶき)の最(もっと)も大きな特徴(とくちょう)の一つは、何と言っても役者(やくしゃ)が全員(ぜんいん)男性(だんせい)であることです。「女形(おんながた)」と呼(よ)ばれる役者(やくしゃ)が、女性(じょせい)の心を声(こえ)や表情(ひょうじょう)、姿勢(しせい)や歩き方など体全(すべ)てを使って演(えん)じます。幼(おさな)い娘(むすめ)から高齢(こうれい)の女性(じょせい)まで、様々(さまざま)な年代を演(えん)じ分けるためには、化粧(けしょう)や衣装(いしょう)、小道具(こどうぐ)の力も借りることになります。
女形(おんながた)に限(かぎ)らず歌舞伎(かぶき)には、すべての演技(えんぎ)に「型(かた)」があります。女形(おんながた)の第一人者(だいいちにんしゃ)である坂東玉三郎(ばんどうたまさぶろう)は、あるインタビュー番組(ばんぐみ)で役者(やくしゃ)にとっての「型(かた)」は、語学を学ぶときの「文法(ぶんぽう)」のようであると述(の)べていました。私たちが言葉(ことば)を学ぶ際(さい)に「文法(ぶんぽう)」を学びながら、語学力を高めるように、役者(やくしゃ)は「型(かた)」を覚(おぼ)えながら、演技(えんぎ)の幅(はば)を広げます。女形(おんながた)も女性(じょせい)を演(えん)じるために必要(ひつよう)な多くの「型(かた)」を身(み)につけて、役者(やくしゃ)として成長(せいちょう)します。
もう一つの特徴(とくちょう)は、代々、歌舞伎(かぶき)の家の芸(げい)が受(う)け継(つ)がれてきた点(てん)です。一つの世代(せだい)から、その次(つぎ)の息子(むすこ)の世代(せだい)へ。そして、また、その次(つぎ)の孫(まご)の世代(せだい)へ。この制度(せいど)は「世襲制(せしゅうせい)」と呼(よ)ばれています。17世紀(せいき)の初(はじ)めに生まれた歌舞伎(かぶき)が21世紀(せいき)まで続(つづ)くことができた大きな理由(りゆう)であると言えるでしょう。
歌舞伎(かぶき)は2008年に日本の伝統(でんとう)文化(ぶんか)の一つとして、「ユネスコ世界(せかい)無形(むけい)文化(ぶんか)遺産(いさん)(UNESCO World Intangible Cultural Heritage)」に登録(とうろく)されました。長い間、人々に愛(あい)され、日本人の心情(しんじょう)を伝(つた)え続(つづ)けている文化(ぶんか)であること、また、同時に、他(ほか)の芸術(げいじゅつ)分野(ぶんや)にも影響(えいきょう)を与(あた)え続(つづ)けていることなどが評価(ひょうか)されました。
歌舞伎(かぶき)には、これらの他(ほか)にも数多(かずおお)くの魅力(みりょく)があります。これから、日本語を学ぶ皆(みな)さんに、その魅力(みりょく)を少しでもお伝(つた)えできればと思っています。
文:岩瀬ありさ写真:写真ACイラスト:イラストAC(2022.11.15)