日本語多読道場 yomujp
歌舞伎(かぶき)を救(すく)った人物(じんぶつ)
皆(みな)さんは、フォービアン・バワーズという歌舞伎(かぶき)を救(すく)った人を知っていますか。
第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)終了時(しゅうりょうじ)のお話です。戦勝国(せんしょうこく)のアメリカは、敗戦国(はいせんこく)の日本のこれからについての話し合(あ)いで、日本に残(のこ)すべきもの、残(のこ)す必要(ひつよう)のないものを検討(けんとう)しました。
この時、「歌舞伎(かぶき)」はどのように考えられていたのでしょうか。
アメリカは「歌舞伎(かぶき)」を残(のこ)す必要(ひつよう)のないものと判断(はんだん)していました。新しい日本には、昔(むかし)の古い考え方が反映(はんえい)された歌舞伎(かぶき)は不要(ふよう)であると考えられたためです。
そのような中、来日した軍人(ぐんじん)の中にフォービアン・バワーズという人がいました。彼(かれ)は、何度も劇場(げきじょう)に足を運ぶうちに、歌舞伎(かぶき)への愛(あい)と理解(りかい)を深(ふか)めていきました。
歌舞伎(かぶき)に日本人の心を感(かん)じた彼(かれ)は、歌舞伎(かぶき)を残(のこ)すべきだと考えるようになります。そして、歌舞伎(かぶき)は日本人の考え方、感(かん)じ方、行動のあり方などが反映(はんえい)され、長い歴史(れきし)の中で育(はぐく)まれてきた伝統文化(でんとうぶんか)であると軍部(ぐんぶ)に主張(しゅちょう)したのです。
もし、フォービアン・バワーズがいなければ、戦後(せんご)、歌舞伎(かぶき)は私たちの前から、姿(すがた)を消(け)していたかもしれません。彼(かれ)のように日本の伝統文化(でんとうぶんか)に価値(かち)を見出(みいだ)し、守(まも)り抜(ぬ)くために行動した人物(じんぶつ)がいたことに改(あらた)めて驚(おどろ)きを感(かん)じます。
文化(ぶんか)は作り手だけでは存在(そんざい)し続(つづ)けることはできません。その文化(ぶんか)を愛(あい)し、支(ささ)える人がいてこそ存在(そんざい)し続(つづ)けることができるのです。自国の文化(ぶんか)を支(ささ)え、守(まも)るのは、必(かなら)ずしも自国の人に限(かぎ)りません。
みなさんにも歌舞伎(かぶき)を共(とも)に支(ささ)える仲間(なかま)、歌舞伎(かぶき)のファンになっていただけたら嬉(うれ)しいです。
※最近の研究では、フォービアン・バワーズだけの功績ではないとも言われています。
文:岩瀬ありさ
画像:パブリックドメイン/いらすとや
(2023.8.29)