日本語多読道場 yomujp
日本の行事(ぎょうじ)「十五夜(じゅうごや)」
暑い8月が終わり、9月中旬(ちゅうじゅん)ごろから、朝晩(あさばん)は涼(すず)しさを感じられるようになってきますね。気持ちのよい風に吹(ふ)かれながら、月を眺(なが)めてはいかがでしょうか。月は形によっていろいろな名前で呼(よ)ばれますが、まん丸の月を満月(まんげつ)といいます。満月(まんげつ)の中でもいちばん美(うつく)しいのが、旧暦(きゅうれき)(昔(むかし)のカレンダー)の8月15日の夜「十五夜(じゅうごや)」の月といわれています。旧暦(きゅうれき)と新暦(しんれき)(今のカレンダー)は1か月ぐらい違(ちが)うので、「十五夜(じゅうごや)」の日は毎年変わります。「十五夜(じゅうごや)」は「中秋(ちゅうしゅう)の名月(めいげつ)」とも呼ばれ、この日に人々は「お月見(つきみ)」をします。みなさんの国には、美(うつく)しい月を眺(なが)める習慣はあるでしょうか。今日は素敵(すてき)な夜にみなさんをお誘(さそ)いします。
まずは十五夜(じゅうごや)の歴史(れきし)です。お月見(つきみ)の習慣は中国から入ってきて、平安(へいあん)時代(じだい)(794年~1185年)に貴族(きぞく)の間に広まったとされています。その頃(ころ)は、月を見ながらお酒を飲んだり、船の上で詩(し)をつくったり、音楽を楽しんだりしたそうです。それが江戸(えど)時代(じだい)(1603年~1868年)に、一般(いっぱん)の人々の間にも広まっていったようです。江戸(えど)時代(じだい)のお月見(つきみ)は、楽しむためというより、収穫(しゅうかく)、つまり米や野菜がたくさんとれたことを感謝(かんしゃ)するためであったと言われています。その習慣が少しずつ変化して今に伝わり、今のお月見は、月を見ながら収穫(しゅうかく)したものをいただくというスタイルが一般的(いっぱんてき)です。見て楽しみ、そして食べて楽しんでいるのですね。
では次に、お供(そな)え物(もの)、つまり飾(かざ)ったり、神様(かみさま)にあげたりするものについてです。まずは「すすき」を飾(かざ)ります。すすきを飾(かざ)るのはいくつか理由があります。すすきは稲(いね)に形が似(に)ているので、米がたくさんとれるように。それから、すすきは切り口が鋭(するど)いので、魔除(まよ)け、つまり悪いものを追(お)い払(はら)うと力があるとされているから。また、すすきは茎(くき)の中が空(あ)いているので、そこに神様(かみさま)が入るから、などの説(せつ)があるようです。
すすき
そして「月見(つきみ)団子(だんご)」を供(そな)えます。団子(だんご)を供(そな)えるのは、形が満月(まんげつ)に似(に)ているからで、同時に、収穫(しゅうかく)に感謝(かんしゃ)する意味も含(ふく)まれます。見た目もかわいらしいですね。十五夜(じゅうごや)なので、15個(こ)の団子(だんご)をピラミッドのように重(かさ)ねるやり方が多いようです。
月見(つきみ)団子(だんご)
それから、地域(ちいき)によっては団子(だんご)ではなく、芋(いも)や栗(くり)、ぶどうなどの野菜や果物(くだもの)を供(そな)えるところもあります。その時期(じき)にとれたものを供(そな)えればいいでしょう。
里芋(さといも
栗(くり
ぶどう
さて、ここからは、十五夜(じゅうごや)とは少し離(はな)れますが、月にまつわる話題(わだい)を少しお楽しみください。
「月でウサギが餅(もち)つき?!」
月の表面(ひょうめん)の黒い部分が何に見えるかということなのですが、どうしてウサギなのでしょう。いくつかの説(せつ)がありますが、インドの仏教(ぶっきょう)の話がもとになっていると言われます。その話というのは、簡単(かんたん)に言うと、老人(ろうじん)の姿(すがた)になった神様(かみさま)を助(たす)けるために自分の体を焼(や)いたウサギを、永遠(えいえん)に月の中に残そうと、神様(かみさま)が月に上らせたというものです。少し悲(かな)しい話ですね。
「竹取(たけとり)物語(ものがたり)」
平安(へいあん)時代(じだい)に書かれた、日本最古(さいこ)の物語(ものがたり)で、これも月が関係しています。古い日本語で書かれていますが、現代語(げんだいご)、つまり今の日本語で書かれたものもありますし、また、「かぐや姫(ひめ)」という、子ども向(む)けに易(やさ)しく書かれた絵本などもあります。よかったら、こんな本も手に取ってみてくださいね。
「月見(つきみ)〇〇」
〇〇に入る言葉はいろいろあります。例えば、月見(つきみ)そばや月見(つきみ)うどん。どんなそば、うどんだと思いますか。これらは、そばやうどんに卵を落(お)としたものです。卵の黄身(きみ)が満月(まんげつ)のようですね。それから、月見(つきみ)バーガーというハンバーガーもあります。これは、目玉(めだま)焼き(やき)を挟(はさ)んだハンバーガーです。他(ほか)には月見(つきみ)草(そう)という名前の植物(しょくぶつ)もあります。この花は夕方(ゆうがた)に咲(さ)き始めて、翌朝(よくあさ)にはしぼんでしまいます。月を見るためだけに咲(さ)く花なんですね。
月見(つきみ)そば
月見(つきみ)バーガー
月見草(つきみそう)
今年の十五夜(じゅうごや)は、どのようにお月見(つきみ)を楽しみますか。素敵(すてき)な夜になりますように。
文:新階由紀子
写真:写真AC
イラスト:イラストAC
(2022.9.6)