鬼
日本の昔話や童話によく出てくるのが「鬼」です。鬼は、体が大きく、肌の色は、青、赤、黄、緑、黒の五色で、それぞれ「青鬼」「赤鬼」「黄鬼」「緑鬼」「黒鬼」と呼ばれます。また、頭に角があり、口にも牙があります。指には鋭い爪があり、手には金棒を持っています。
青鬼と赤鬼(登別温泉)
鬼は、このような姿形のため、強くて恐しいものだと考えられてきました。昔話の「桃太郎」に出てくる鬼は、鬼ヶ島に住んで、いろいろな所から宝物を盗んでいました。また、京都の大江山には、酒呑童子と呼ばれる鬼がいて、山から降りてきて都を荒らしていた、と伝えられています。
桃太郎の鬼退治(はちのへ三社大祭)
日本では、2月3日の節分に「鬼は外、福は内」と言って豆まきをします。これは、鬼(邪気)を追い払う行事で、全国的に行われています。
節分の豆まき
鬼神社
大分県国東市では、鬼が仏(不動明王)と重ねられ、人々に幸せを届ける鬼として、信仰されています。また、愛知県奥三河地方で行われる花祭りに出てくる鬼は、大地に生命を吹き込んで五穀豊穣をもたらしてくれる、善鬼と考えられています。
このほかにも、日本のお寺や城の屋根に付けられる鬼瓦は、雨水の侵入を防ぐだけでなく、怖い鬼の顔を外に見せることによって、災いから守ってくれるという考えによるものです。
鬼瓦
人間を助けてくれる鬼は、いろいろな話に出てきます。浜田廣介の童話『泣いた赤鬼』に出てくる赤鬼もおじいさんや村の人を助けてあげました。『鬼滅の刃』にも人を助ける鬼が出てきますね。
『泣いた赤鬼』
日本語の中にも「鬼」の言葉が入ったことわざがたくさんあります。3つ紹介しましょう。
まず、「鬼に金棒」です。これは「強い者に、さらに強い物が加わる」という意味です。例えば、野球のドジャースには、元々いい選手がたくさんいるのに、大谷翔平選手まで加わったら、鬼に金棒ですね、のように使います。
鬼に金棒
次に「鬼のいぬ間に洗濯」は、上司や口うるさい人がいない間に、のんびりとくつろぐ、という意味のことわざです。先の野球の例を使うと、コーチがいない間にちょっと休憩しよう、鬼のいぬ間に洗濯だ、と言うことができます。
鬼のいぬ間に洗濯
最後に「鬼の目にも涙」は、鬼のように冷酷な人でも、時には優しい気持ちを持ったり、泣いて涙を流したりすることがある、という意味です。練習に厳しいコーチが、チームが優勝したときに泣いて喜んでくれました。鬼の目にも涙ですね、というように使います。
鬼の目にも涙
このように鬼は「恐ろしいもの」「怖いもの」と同時に「強い力を持つもの」「守ってくれるもの」として人間の生活の中にも溶け込んできました。妖怪ですが、人間にとって大事な存在でもあるのですね。
文:Naoko Ikegami
写真:写真AC/イラストAC
(2026.01.13)