箱根駅伝
みなさんは駅伝というスポーツを知っていますか。正式には駅伝競走という陸上競技で、長距離を数人がリレー形式で走り、かかった時間を競うチーム戦です。選手は走るとき、「たすき」という布でできた輪を肩からななめに掛けます。その「たすき」を選手から選手へとつなぎながら、ゴールを目指すのです。
日本では人気の競技で、中学生から大人まで、またアマチュアからプロまでさまざまな大会が開かれています。その中でももっとも有名な大会の一つが「箱根駅伝」です。
「たすき」をリレーしながらチーム全員でゴールを目指す
「箱根駅伝」は、正式には「東京箱根間往復大学駅伝競走」と言い、毎年1月2日と3日に行われます。箱根駅伝には、関東の大学のチームと、予選会でタイムのよかった選手たちによる関東学生連合チームが参加できます。2025年には、20校と1チーム、合計21チームが出場しました。
駅伝のルートは、東京の大手町から、神奈川県箱根町にある芦ノ湖までを往復します。1月2日に行われるのは往路5区間(107.5km)、3日に行われるのは復路5区間(109.6km)で、合計10区間(217.1km)を10人の選手がたすきをつなぎながら走ります。
区間ごとに特色があり、特に有名なのは各チームのエースが走る2区、また標高差約834mの箱根の山をかけ上る5区と、一気に下る6区です。
箱根駅伝のコース(しんぎんぐきゃっと – 投稿者自身による著作物)
箱根駅伝の歴史はとても古く、最初の大会は1920年に開かれました。1912年、金栗四三というマラソン選手が日本人で初めてオリンピックに出場したのですが、残念ながら棄権してしまいます。その時金栗は世界と日本との差を痛感しました。そして、「世界に通用するランナーを育てたい」という強い思いを抱くようになります。その思いがきっかけとなり、箱根駅伝は始まったのです。
現在では、金栗が思い描いたように、才能のある有望な選手が毎年出場するようになりました。実際、箱根駅伝を走ったランナーで、その後オリンピックなど世界の舞台で活躍している選手も多いです。
このような選手たちを応援しようと、毎年沿道には多くの観客が訪れます。また、テレビでもスタートからゴールまで生中継され、日本中の人々が注目する、お正月の一大イベントとなっています。
箱根駅伝を走る選手たち
このように多くの人が注目する箱根駅伝の魅力とは何でしょう? まず、駅伝がチーム戦である、ということが挙げられると思います。箱根駅伝はスタートからゴールまで10人で走り、その合計のタイムで優勝が決まります。一人でも途中で止めてしまうと、そのチームは失格になってしまいます。だから、たとえどんなに苦しくなっても、自分自身のためではなくチームのために、何とかたすきを次のランナーにつなごうと走ります。その一生懸命さに観客は感動するのでしょう。
また、大学ごとにカラーが異なる点も魅力の一つです。陽気な雰囲気のチームもあれば、真面目で厳しい雰囲気のチームもあります。そのような違いを感じるのも楽しみ方になります。
そして、景色がどんどん変わっていくのも魅力的です。最初は高層ビルに囲まれた都会を走っていたのが、だんだんと風景に自然が多くなり、最後には山の中を駆け上ります。その景色の変化は長時間見ていても飽きません。
魅力がいっぱいの箱根駅伝。2026年1月2日、ぜひ生で、またはテレビで、観戦してみませんか。
文:荻原典子
写真: photoAC/wikimedia commons/荻原典子
(2025.12.19)