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「ふじ(さん)」は日本人にとってどのような山か

「不尽」「不死」「不二」「冨慈」「婦尽」 これらは何のことか分かりますか? すべて「ふじ」と読みます。日本で一番(いちばん)有名で一番(いちばん)高い山、「ふじ(さん)」のことです。「ふじ(さん)」は今は漢字では「富士山(ふじさん)」と書きますが、(むかし)はいろいろな書き方をしていました。もちろん「富士(ふじ)」も、古くから使われていました。

ふじ(さん)

でも、残念(ざんねん)ながら、なぜ「ふじ」というのか分かっていません。古い時代から日本に住んでいたアイヌという民族(みんぞく)がいますが、そのアイヌの人のことばで火のことを「フチ」というので、それから「ふじ」になったという(せつ)があります。古くから噴火(ふんか)()(かえ)していた山だったという記録(きろく)があるので、「火の山」つまり「フチの山」だった可能性(かのうせい)があるのです。

「ふじ(さん)」は日本で一番(いちばん)高い山で、高さが3,776メートルあります。現在(げんざい)噴火(ふんか)はしていませんが、一度噴火(ふんか)すると、大きな被害(ひがい)をもたらしました。「ふじ(さん)」の噴火(ふんか)は、一番(いちばん)近いところでは、(やく)300年前の1707年にありました。江戸(えど)時代のときですが、とても大きな噴火(ふんか)だったため、江戸(えど)の町(今の東京)でも噴火(ふんか)による(はい)()り、昼間でも真っ(くら)だったといいます。さらに噴火(ふんか)()()った(はい)地面(じめん)につもり、風によって()ばされたため、あちこちで(はい)を悪くする人が出たそうです。

そのときから「ふじ(さん)」は一度も噴火(ふんか)をしていません。でも、いつかまた噴火(ふんか)をするかもしれないと考えられています。そうなると、大きな被害(ひがい)が生じる可能性があります。

「ふじ(さん)」はむかしから、いろいろな文学作品の中でえがかれています。それだけ日本人にとっては特別な山だったのです。
「ふじ(さん)」をかいた多くの()もあります。江戸(えど)時代の画家葛飾北斎(かつしかほくさい)がかいた『富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)』はとくに有名です。「富嶽(ふがく)」も「ふじ(さん)」のことです。この()は「ふじ(さん)」のさまざまな姿(すがた)題材(だいざい)としている連作(れんさく)版画(はんが)です。刊行(かんこう)されたときには大変(たいへん)評判(ひょうばん)になったようです。
「ふじ(さん)」に(のぼ)る人は江戸(えど)時代にも多くいて、今と同じように、日の出前に頂上(ちょうじょう)(のぼ)り、「御来迎(ごらいごう)」 (「日の出」のこと)をおがんだり、火口をめぐる「お(はち)めぐり」などをしたりしました。
御来迎(ごらいごう)
ふじ(さん)の火口

江戸(えど)時代に江戸(えど)の町に住む人たちは「ふじ(さん)」そのものを神様(かみさま)のように考えていました。そのため、江戸(えど)の町に「ふじ(さん)」を作ってしまったのです。今でも東京の各地(かくち)に、そのときに作られた「ふじ(さん)」の(かたち)をした(おか)(のこ)っています。

また、江戸(えど)の人たちが「ふじ(さん)」のことをとても(ふか)(あい)してうやまっていたことは、地名からもわかります。たとえば、各地(かくち)に「富士(ふじ)()」という地名がありますが、これはほとんどが「ふじ(さん)」が見える場所(ばしょ)という意味なのです。

そんな山なら一度は(のぼ)ってみたいという人がいるかもしれませんね。私は(のぼ)ったことはありません。でも、高い山ですので、(のぼ)途中(とちゅう)でめまい、頭痛(ずつう)などをおこす人も多くいるようです。また風が強くて風に()ばされた(いし)()ちてきたり、道が(すべ)りやすかったりしてけっこう危険(きけん)な山のようです。

(のぼ)るときはくれぐれも気を()けて(のぼ)ってください。

文:神永曉

写真:写真AC/岡野秀夫

画像:防災情報のページ(内閣府)

(2024.9.13)

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