辞典じてん」と「辞書じしょ」のちがいは何?

辞典じてん」は、文字やことばをまった順序じゅんじょならべて、その読み方や意味などをしめしたものです。これを「辞典じてん」ではなく、「辞書じしょ」と言う人もいます。「辞典じてん」と「辞書じしょ」は同じものなのでしょうか。
結論けつろんから先に言いますと、「辞典じてん」と「辞書じしょ」はほとんど同じものです。私も特に区別くべつせず、同じように使っています。国語辞典こくごじてんでも、同じ意味だと説明せつめいしているものが多いと思います。でも、まったく同じ意味かというと、そうではありません。
辞典じてん」と「辞書じしょ」では、「辞書じしょ」の方が古い言い方なのです。「辞書じしょ」という語が日本で使われるようになったのは、江戸時代えどじだいの終わりのころのようです。もちろんそれよりも前に、日本に辞典じてんがなかったわけではありません。「節用集せつようしゅう」とばれる辞典じてんがありました。でもこの辞典じてんは、今のような国語辞典こくごじてんとはちがい、意味の説明せつめいがない語もありました。

節用集せつようしゅう

辞典じてん」という語は、江戸時代えどじだいよりあとの、明治時代めいじじだい(1868~1912年)になってから生まれました。1878年(明治めいじ11年)に出版しゅっぱんされた『日本小辞典にほんしょうじてん』が最初さいしょだと言われています。名前に「辞典じてん」が使われています。そしてこの辞典じてんの中に、「文明国ぶんめいこく辞典じてんのない国はない」という文章ぶんしょうもあります。

日本小辞典にほんしょうじてん

日本小辞典にほんしょうじてん』からあとは、「辞典じてん」も使われるようになりました。「国語辞典こくごじてん」「漢和辞典かんわじてん」などのように使われています。「辞書じしょ」は、名前で使われることはほとんどありませんでした。「辞典じてん」と「辞書じしょ」のいちばん大きなちがいは、このように名前で使われるかどうかということなのです。

ところで、むかし辞典じてんは「節用集せつようしゅう」とばれていたと書きました。いい機会きかいですから、少し日本の辞典じてん歴史れきしについてお話ししましょう。

日本でいちばん古い辞典じてんは、850年(平安時代へいあんじだいのはじめ)に空海くうかい弘法大師こうぼうだいし)というおぼうさんが書いた『篆隷万象名義てんれいばんしょうめいぎ』だと言われています。空海くうかい中国ちゅうごくとうわたって仏教ぶっきょうを学んだ、とても有名なおぼうさんです。『篆隷万象名義てんれいばんしょうめいぎ』は中国ちゅうごく辞典じてんをもとにした漢字の辞典じてんです。

篆隷万象名義てんれいばんしょうめいぎ

日本のことばの辞典じてんでいちばん古いものは、892年ごろに昌住しょうじゅうというおぼうさんが編集へんしゅうしたと言われている、『新撰字鏡しんせんじきょう』です。ただ、『新撰字鏡しんせんじきょう』は、現在げんざい漢和辞典かんわじてんのようなかたち辞典じてんでした。

新撰字鏡しんせんじきょう

国語辞典こくごじてんべるものの最初さいしょは、1180年(平安時代へいあんじだいのおわり)ごろにできたと言われる『色葉字類抄いろはじるいしょう』です。編集へんしゅうしたのは橘忠兼たちばなのただかねという人です。この人はどんな人なのかよくわかっていません。『色葉字類抄いろはじるいしょう』は、生活せいかつの中で使われていたことばを集め、それぞれのことばについて、漢字を使うときの書き方と、使い方を簡単かんたんしめしたものです。

色葉字類抄いろはじるいしょう

今と同じようなかたち辞典じてんが生まれたのは、明治時代めいじじだいになってからです。国語学者の大槻文彦おおつきふみひこ編集へんしゅうした『言海げんかい』(1889~91年)が最初さいしょです。この『言海げんかい』のあと、日本ではたくさんの国語辞典こくごじてん編集へんしゅうされるようになりました。

言海げんかい

文:神永曉

写真:国立国会図書館

(2022.5.27)

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