ユートピアを目指(めざ)して
『銀河鉄道(ぎんがてつどう)の夜』という童話(どうわ)のタイトルを聞いて、皆(みな)さんはどんな物語(ものがたり)を想像(そうぞう)しますか。この童話(どうわ)は宮沢(みやざわ)賢治(けんじ)が書いた童話(どうわ)で、少年(しょうねん)ジョバンニが友達(ともだち)のカムパネルラと銀河鉄道(ぎんがてつどう)という汽車(きしゃ)で旅行をする物語です。
賢治(けんじ)は岩手県(いわてけん)盛岡(もりおか)の農林(のうりん)学校で農業(のうぎょう)を勉強しました。学校を卒業(そつぎょう)してから、農業(のうぎょう)の学校の先生をしたり、農業(のうぎょう)を貧(まず)しい人達(ひとたち)に教えたりしました。教える仕事をしながら、賢治(けんじ)は詩(し)や童話(どうわ)を書きました。
賢治(けんじ)が書いた詩(し)の中で一番有名なのは「雨ニモマケズ」でしょう。この詩(し)の中で、賢治(けんじ)はどんなものにも、どんなことにも負(ま)けない人になりたいと言っています。賢治(けんじ)は『銀河鉄道(ぎんがてつどう)の夜』の他(ほか)にも『風の又三郎(またさぶろう)』、『注文(ちゅうもん)の多い料理店(りょうりてん)』などの童話(どうわ)を書きました。
「雨ニモマケズ」
『注文(ちゅうもん)の多い料理店(りょうりてん)』は、童話(どうわ)ですが少し怖(こわ)いお話です。森(もり)に狩(か)りに行ったお金持ちの男二人が道に迷(まよ)い、困(こま)っている時、森(もり)の奥(おく)でレストランを見つけます。レストランに入ると、誰(だれ)もいませんが、中のドアにはりがみがあります。それには、「ぼうしとコートをぬいで下(くだ)さい」とか、「牛乳(ぎゅうにゅう)のクリームを体にぬって下さい」とか色々な注文が書いてあります。男達(おとこたち)は、その注文の通(とお)りにしていきますが、最後(さいご)に、「体に塩(しお)をぬって下さい」というはりがみを見て、自分たちが客(きゃく)ではなく、料理されてしまうということに気がつきます。賢治(けんじ)は肉を全(まった)く食べなかったわけではないそうですが、そのころではめずらしい菜食主義(さいしょくしゅぎ)を理想(りそう)としていたようです。ですから、こんな童話(どうわ)を書いたのかもしれません。
賢治(けんじ)は農民(のうみん)にも芸術(げいじゅつ)が必要(ひつよう)だと考えて、教えていた農民(のうみん)たちを家に集めて、レコードを聴(き)かせたり、音楽会(かい)を開いたりしたそうです。また、ドイツ語やエスペラント語を勉強して、エスペラント語で詩(し)を書いたりもしました。そして、賢治(けんじ)は「イーハトーブ」というユートピア、つまり理想の世界を心の中に持っていたと言います。
写真:国立国会図書館イラスト:イラストAC
公開:2022.7.5
————続きは本書をご覧ください。
『The Great Japanese 30の物語[初中級]―人物で学ぶ日本語―』
石川智・米本和弘[著]
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