近所に一人で住んでいるおばあちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし、マナミ。日曜日ひま? 物置をかたづけるのを手伝ってほしいんだけど」
日曜日は予定がないし、おばあちゃんの家に行ったらおばあちゃんが作ったごはんも食べられる。おばあちゃんは料理が上手だ。肉じゃが、おでん、いなりずし…何でもおいしい。
それで、私は、うん、いいよ。行く行く。と返事した。
おばあちゃんの家の物置は、家の外にある。あそびに行ったとき、いつも見ていたけど中に入ったことはなかった。その中には、部屋の中に置けない大きい道具やあまり使わないものがしまってあるそうだ。それから、古すぎて、いつ、だれが使っていたのかわからないものもあると聞いたことがある。どんなものがあるか見てみたい。とてもおもしろそうだ。
日曜日。
おばあちゃんの家の物置の中には、いろいろなものがたくさんあった。でも、整理されていなくて、あまりきれいじゃなかった。
私たちは、まず、捨てるものと捨てないものを分けた。そして、捨てるものを外に出した。
次に、よく使うもの、ときどき使うもの、あまり使わないものを分けて、置く場所を決めた。それから、物置の中をかたづけ始めた。
汗をかいたり、手が痛くなったりして大変だったけど、おばあちゃんと話しながら道具を運んだり、箱をたなにならべたりするのは楽しかった。
物置の中には、いろいろな箱があった。
何が入っているのか見てみたかったけど、箱にかぎがかかっていて、中を見ることができなかった。
「おばあちゃん、この箱に何が入っているの?」
「この箱の中にはねぇ、『たからもの』が入っているのよ」
おばあちゃんは、その箱を大切そうにたなの一番上に置いた。
「『たからもの』って何? どんなもの? 見たいな」
「マナミに見せてあげたいんだけど、かぎをなくしてしまったのよ」
古い箱だから無理に開けようとしたら、かぎがこわれてしまうかもしれない。それで、そのまま、ずっとここに置いておいたそうだ。
「かぎ屋にたのんだら、開けてもらえるかもしれないよ」
かぎがなくなったり、こわれたりした古い箱や物置のドアを開けたら、とても高く売れるものが入っていて、びっくり! テレビでそういう番組を見たことがあった。入っていたのは、昔のお金とか、ほう石とか、店で買うことができないめずらしいものとか…。もし、そういうものだったら、おばあちゃんは大金持ちになれるかもしれない!!
物置がきれいになった後、私は、駅前のかぎ屋に電話してみた。
かぎ屋の人がすぐに来てくれて、持ってきた道具で箱を開けてくれた。
「よかったね、おばあちゃん。『たからもの』を見せて」
私はドキドキしながらおばあちゃんが箱の中に入っているものを出すのを待った。
箱の中から出てきたのは、古い手紙だった。
「これは、亡くなったおじいちゃんが、おばあちゃんにくれた手紙よ」
おばあちゃんのたからものは、おじいちゃんからのラブレターだった。
高く売れないけど、とてもすてきな『たからもの』だ。
文:牧友美子
画像:イラストAC/写真AC
(2024.5.21)
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