Ophelia by John Everett Millais
1851-1852, Tate Britain, London
この絵(え)は、イギリス人の画家ジョン・エヴァレット・ミレー(1829年〜1896年)によって描(えが)かれました。
水(みず)に浮(う)かんでいるのは、シェイクスピアの四大悲劇(ひげき)の一つ「ハムレット」の恋人(こいびと)のオフィーリアです。オフィーリアは、恋人(こいびと)のハムレットに冷(つめ)たくされ、また父親を殺(ころ)された悲(かな)しみのあまり川に落(お)ちて死んでしまいます。この作品は、悲劇的(ひげきてき)な死を遂(と)げたオフィーリアの最期(さいご)の姿(すがた)なのです。
ミレーは11歳(さい)の時、史上最年少(しじょうさいねんしょう)でロンドンのロイヤル・アカデミー付属(ふぞく)美術(びじゅつ)学校に入学し、1848年に同じ学校にいたロセッティらと共(とも)に「ラファエル前派(ぜんぱ)」を結成(けっせい)しました。なお、この絵(え)のモデルになったのは、後(のち)にロセッティの妻(つま)となるエリザベス・シダルだそうです。
この絵(え)の中でオフィーリアは、溺(おぼ)れて亡(な)くなる直前(ちょくぜん)の表情(ひょうじょう)をしています。「ハムレット」の中に、オフィーリアは人魚(にんぎょ)のように川に浮(う)かびながら、古い歌を口ずさんでいた、という場面(ばめん)があります。この絵(え)はその瞬間(しゅんかん)を描(えが)いているのでしょうか。少し口が開いて歌っているようにも見えますが、目はうつろで、亡(な)くなる直前(ちょくぜん)の静(しず)けさが見事(みごと)に描(えが)かれています。
オフィーリアだけでなく、周(まわ)りの花も明るく、草木(くさき)も鮮(あざ)やかな色を使って丁寧(ていねい)に描(えが)かれています。これらの花は、芥子(けし)、柳(やなぎ)、野ばらなどで、その花言葉は「死」「見捨(みす)てられた愛(あい)」「孤独(こどく)」です。ヴィクトリア朝(ちょう)の時代(1837年〜1901年)には、花言葉が流行(りゅうこう)したそうですから、ミレーもこれらの花を選(えら)んだのでしょう。また、沈(しず)んでいる手から、水(みず)の中の冷(つめ)たい感(かん)じがよくわかります。
ミレーは、明るい色を使って細(こま)かいところまでできるだけ自然(しぜん)に近い形(かたち)で描(えが)き上げました。このオフィーリアのように、か弱(よわ)い女性は、よくラファエル前派(ぜんぱ)の画家たちのモチーフになっています。色彩豊(しきさいゆた)かな自然(しぜん)の中にいる青ざめたオフィーリアは、儚(はかな)くも、より美(うつく)しく見える気がします。
参考
https://www.tate.org.uk/art/artworks/millais-ophelia-n01506/story-ophelia
文:Naoko Ikegami
画像:パブリックドメイン
(2024.3.19)
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