日本人は昔から、夜の空に浮かぶ月を愛してきました。「花（桜のこと）」「鳥」「風」「雪」などとともに、自然の中にある美しさの代表と考えてきたのです。これらをまとめて言う、「花鳥風月」「雪月花」という語もあります。
月は細く見えていたものがだんだん丸くなりますが、日本人はその形によって、いろいろな名前をつけてきました。
月が太陽と同じ方向にあるときは、地球に暗い面を向けるので、月は見えなくなります。それを「新月」といいます。
月の見えない「新月」
やがて月が少しずつ見えるようになると、細い弓のような形になります。これは「三日月」と言います。このあと月は弓につるを張ったような形になりますが、これを「弓張月」と言います。
三日月
弓張月
弓につるを張っている
まん丸になった月は「満月」です。「望月」とも言います。また、「十五夜」とも言います。なぜ十五かというと、「新月」のときを最初の夜とすると、満月になるのは十五番めの夜だからです。
満月
満月の中では、陰暦8月15日の夜の月が最も美しい月と考えられていました。その日の夜、月をながめて楽しむことをお月見と言います。陰暦は、昔の日本で使われていた暦で、現在の暦とはだいたい一か月ずれています。したがって、現在ではふつうは9月の満月の夜にお月見をします。このとき、ススキの穂やサトイモ、おだんごなどを用意します。
ススキ
おだんご
サトイモ
お月見
満月だけでなく、その前後の夜の月も美しいので、それにも名前が付いています。
陰暦9月13日（現在では10月）の月は「十三夜」と言います。この月は、陰暦8月15日の十五夜の月の次に美しいと言われ、「のちの月」とも呼ばれています。「のち」は順番があとという意味です。
陰暦8月16日（現在では9月）の月、つまり陰暦8月15日の満月の次の日の月は、「いざよいの月」と言います。「いざよい」は漢字で「十六夜」と書きます。「いざよい」はためらうこと、おそくなることという意味で、16日の月は満月よりも少しおくれて空にのぼってくることからそのように言うのです。
十三夜
十六夜
その次の、陰暦8月17日の月は、「立待月」「立待の月」と言います。立ちながら待っているうちに夜の空にのぼってくる月という意味です。
次の陰暦8月18日の月は「居待月」「居待の月」と言います。前の日の月よりももっとおくれて空にのぼってくるので、すわって待つという意味です。
さらに陰暦8月19日の月は、月の出るのが前の夜よりもさらにおそくなることから、寝て待つという意味で「寝待月」「寝待ちの月」と言います。
立待月
居待月
寝待月
どうやら、月の形だけでなく、月が夜の空にのぼる様子も楽しんでいたようです。
文：神永曉
写真：フォトAC
イラスト：イラストAC
(2022.9.2)
