日本語多読道場 yomujp

鳥は人間のことばで()く?

ウグイスという小さな鳥がいます。春になると、人が住んでいる(ところ)でも()(ごえ)を聞くことができる鳥です。背中(せなか)はうすい茶色に近い(みどり)色で、おなかは白い鳥です。

日本人はこの鳥の()(こえ)を、「ホーホケキョ」と表現(ひょうげん)しています。この「ホーホケキョ」は、ある日本語を(あらわ)しています。「ホー」は「(ほう)」のことで、ほとけの教えた内容(ないよう)のことです。「ホケキョウ」は「法華経(ほけきょう)」で、仏教(ぶっきょう)のお(きょう)のことです。

仏教(ぶっきょう)のお(きょう)

このように、日本人は(みみ)で聞いた鳥の()(ごえ)を、人間のことばで表現(ひょうげん)しようとしました。これを「聞きなし」といいます。

ホトトギスという鳥の()(ごえ)も人間のことばで(あらわ)しています。ホトトギスは背中(せなか)(はい)色で、おなかに白と黒の(せん)模様(もよう)があります。()(はね)の長い鳥です。

ホトトギスの()(ごえ)は、「テッペンカケタカ」「トッキョキョカキョク」などと聞こえると考えられました。「テッペン」は、一番(いちばん)高いところをいう「天辺(てっぺん)」です。「カケタカ」は、えさを高いところにかけたのか(ぶらさげたのか?)という意味だと考えられています。

「トッキョキョカキョク」は、漢字で「特許許可局(とっきょきょかきょく)」と書くと考えられています。「特許(とっきょ)」は、新しい物を発明した時、発明した人だけが作ったり使ったりしてもいいという権利(けんり)のことです。特許許可局(とっきょきょかきょく)」はその権利(けんり)許可(きょか)する役所(やくしょ)という意味です。ただ、「特許許可局(とっきょきょかきょく)」という名の役所(やくしょ)はほんとうはありません。

ホオジロという小鳥は、「一筆(いっぴつ)啓上(けいじょう)つかまつり(そうろう)」と()いていると考えられました。ずいぶん長い()(ごえ)ですね。「一筆(いっぴつ)啓上(けいじょう)」は、むかし男性(だんせい)が手紙の最初に使った語です。「一筆(いっぴつ)啓上(けいじょう)つかまつり(そうろう)」は、手紙を書いて()し上げますという意味です。ホオジロは目の上と下、ちょうど(かお)のほほのあたりに白い(せん)があることからそのように名付(なづ)けられた鳥です。

コジュケイはもともと日本にはいなかった鳥です。中国や台湾(たいわん)から()うために輸入(ゆにゅう)され、それが(はやし)草原(そうげん)に住むようになりました。このコジュケイの()(ごえ)は、「ちょっと()い」と聞こえると言われています。

おもしろいのはブッポウソウという鳥です。漢字で書くと「仏法僧」です。これは仏陀(ぶっだ)、つまりほとけの意味の「(ぶっ)」と、ほとけが教えた内容(ないよう)の「(ぽう)」と、その仏法(ぶっぽう)実際(じっさい)に行う「(そう)(お(ぼう)さん)」という意味です。この鳥の()(ごえ)はむかしからブッポウソウと聞こえると言われていました。ところが、実際(じっさい)にはそうは聞こえません。グエーグエーとまったくちがうように聞こえます。(じつ)()(ごえ)が「ブッポーソー」と聞こえる鳥は別にいたのです。コノハズクという、フクロウの仲間(なかま)の鳥です。「ブッポーソー」と()く鳥はコノハズクだとわかったのは、1930年ごろになってからです。長い間だれも気がつかなかったのです。

これらの鳥の()(ごえ)は、インターネットで検索(けんさく)すると聞けますので、本当(ほんとう)にそのように聞こえるかどうか、ぜひ聞いてみてください。

文:神永曉

写真:写真AC

(2023.3.10)