日本語多読道場 yomujp

水上(みなかみ)温泉(おんせん)

「なま」の温泉(おんせん)?と土地の料理を楽しむ

日本のいろいろな土地を旅行していると、外国のみなさんは、漢字で書かれた地名や駅の名前をどう読むかわからない時があるでしょう。下の写真をみてください。「みなかみ温泉(おんせん)」とか「水上(みなかみ)(えき)」と書いてありますね。この「みなかみ」と「水上」は同じ地名です。駅の入口やホームでは、漢字のほかにひらがなや英語でも名前が出ていて、わかりやすく便利(べんり)です。

「水上」や「みなかみ」という文字がみえる

「水上」という漢字は「みなかみ」のほかに、人の名前で「みずかみ」さんとか、水の上(みず  うえ)という意味で「すいじょう」と読むこともあります。では、地名の「みなかみ」にはどのような意味があるのでしょうか。やはり「水」と関係(かんけい)があります。みなかみ温泉(おんせん)がある「みなかみ町」には、日本で()(ばん)()に長い川である、利根川(とねがわ)(なが)れが始まる場所(ばしょ)水源(すいげん))があります。東京や関東で水道に使われている「水」は、この川の「上」(上流(じょうりゅう))から(なが)れているのです。
上の写真は利根川(とねがわ)景色(けしき)です。近くには谷川岳(たにがわだけ)という高い山もあり、旅行者は夏には登山(とざん)を、冬にはスキーを楽しむことができます。また最近(さいきん)は、ボートに()って利根川(とねがわ)(なが)れを下る「ラフティング」という水上(すいじょう)スポーツも人気です。

ラフティング

この(あた)りは(ゆき)がたくさん()

そして、もう一つ有名なのが温泉(おんせん)です。(むかし)、このあたりでは、利根川(とねがわ)(そこ)から温泉(おんせん)が出ていました。今では利根川(とねがわ)(なが)れにそって、いろいろな場所(ばしょ)温泉地(おんせんち)ができています。町にはお()種類(しゅるい)がそれぞれちがう温泉(おんせん)が18か(しょ)あり、「みなかみ18(とう)」とか「水上(みなかみ)温泉郷(おんせんきょう)」と()ばれています。今回(こんかい)は、その中心である「みなかみ温泉(おんせん)」で、温泉(おんせん)と土地の料理を楽しみましょう。

源泉(げんせん)()宿(やど)松乃井(まつのい)

まずは、みなかみ温泉(おんせん)一番(いちばん)大きな旅館「源泉(げんせん)()宿(やど)松乃井(まつのい)」からです。この宿(やど)は「温泉(おんせん)リゾート」と()ばれていて、4種類(しゅるい)温泉(おんせん)による10か(しょ)以上のお風呂(ふろ)があります。特に(ほか)の旅館とちがうのは、温泉(おんせん)が出る方法(ほうほう)です。
生温泉(なまおんせん)」と書いてありますね。「(なま)ビール」や「(なま)(たまご)」、「生放送(なまほうそう)」は、みなさんも聞いたことがあると思いますが、「生温泉(なまおんせん)」はめずらしいでしょう。「生」という漢字には「()きる」、「生活(せいかつ)」、「生姜(しょうが)」など、ほかにもいろいろな()(かた)がありますが、「生温泉(なまおんせん)」の「生」は「なま」と読んで、そのまま、とか、本物、直接(ちょくせつ)というような意味になります。温泉(おんせん)は空気や(ねつ)にふれると変化(へんか)してしまうので、この旅館では、温泉(おんせん)最初(さいしょ)に出る地下の井戸(いど)源泉(げんせん))からお風呂(ふろ)(そこ)へ、そのまま(なが)れるようにしているのです。「生ビール」の「なま」には、最初(さいしょ)につくる時、(ねつ)(くわ)えていないという意味がありますが、「生温泉(なまおんせん)」も同じで、最初(さいしょ)と同じ温度(おんど)のままお風呂(ふろ)(なが)れています。源泉(げんせん)温度(おんど)(ひく)いため、中に入ると少しぬるいですが、一番(いちばん)自然(しぜん)に近い(かたち)で本物の温泉(おんせん)(かん)じることができます。

旅館にあるプールや露天風呂(ろてんぶろ)

松乃井(まつのい)」には、広くて景色(けしき)がよい露天風呂(ろてんぶろ)温泉(おんせん)プールもあり、多くの人がにぎやかに温泉(おんせん)を楽しんでいます。本当(ほんとう)に、海外のリゾート地にいるような(かん)じです。
さて、(つぎ)はJR水上駅(みなかみえき)の近くにある、小さな旅館へ行ってみましょう。このあたりには、昔から(つづ)くお店や、古い建物が(のこ)温泉街(おんせんがい)がありますが、ふだんは通る人が少なく、とても(しず)かです。

水上駅(みなかみえき)の近くの温泉街(おんせんがい)

こちらは「みなかみの自然を楽しむお宿MICASA」です。MICASAとは、スペイン語で「私の家」という意味です。玄関(げんかん)と入口にある和室(わ しつ)は、とても()ち着いたふんいきで、なんとなくほっとしますね。

MICASA)

ここの温泉(おんせん)には、「貸切(かしきり)風呂(ぶろ)」が2か(しょ)あります。「貸切(かしきり)風呂(ぶろ)」とは中からカギをかけ、ひとりや家族だけで使えるお風呂(ふろ)のことで、あいていればいつでも()きな時に入ることができます。露天風呂(ろてんぶろ)もあり、ほかの人を気にせずに、ゆったりと温泉(おんせん)を楽しむことができるでしょう。

貸切(かしきり)風呂(ぶろ)

そして、小さな旅館で一番(いちばん)の楽しみは食事です。その地域(ちいき)にしかないめずらしい料理や、その宿(やど)でしか食べられない特別なメニューがよく出るからです。さっそく「MICASA」の夕食をみてみましょう。

旅館の夕ご(はん)

どの料理も、とてもおいしそうですね。この中に、群馬(ぐんま)(けん)で特に有名な材料(ざいりょう)を使ったメニューが2つあります。どれか分かりますか?
まず1つめは、左上のすき()きです。すき()きは日本じゅうどこにでもあるなべ料理ですが、中に使われている肉が特別なのです。これは「上州(じょうしゅう)和牛(わぎゅう)」というブランドの牛肉です。上州(じょうしゅう)というのは群馬(ぐんま)(けん)のことで、上州(じょうしゅう)和牛(わぎゅう)自然(しぜん)(ゆた)かな群馬(ぐんま)(けん)で生まれ、(そだ)った牛のことをいいます。上州(じょうしゅう)和牛(わぎゅう)はやわらかくて(かお)りがあり、とてもぜいたくなおいしさが味わえます。すき()きやステーキで食べるのがおすすめです。

2つめは、右上の刺身(さしみ)こんにゃくです。こんにゃくはイモからつくられた食べ物で、それを魚の刺身(さしみ)のように、うすく切ったものが刺身(さしみ)こんにゃくです。みなかみ町がある群馬(ぐんま)(けん)は、こんにゃくの生産量(せいさんりょう)が日本一で、刺身(さしみ)こんにゃくは土地の有名な料理なのです。この旅館では手づくりで、(つめ)たい(こおり)の上にのせた刺身(さしみ)こんにゃくが出てきます。酢味噌(すみそ)のたれをつけて、口の中に入れると、()にあたる感覚(かんかく)がモチモチしてやわらかく、とろけるような味わいです。

このように地域(ちいき)でつくったものを、地域(ちいき)の中で消費(しょうひ)することを「地産地消(ちさんちしょう)」といいます。外からきた旅行者にとっても、そこにしかないものを体験できるので、うれしいですね。

みなかみ温泉(おんせん)は、東京(上野)から電車で(やく)3時間、途中(とちゅう)まで新幹線(しんかんせん)に乗ると(やく)2時間で行くことができます。みなさんも、豊かな大自然(だいしぜん)からのプレゼントである「なま」の温泉(おんせん)にふれ、おいしい土地の料理を味わってみませんか?

文:白石誠

写真:白石誠

(2023.1.16)

You cannot copy content of this page