日本語多読道場 yomujp
「青信号(あおしんごう)」は「青(あお)」なのに、なぜ緑(みどり)色?
道路(どうろ)の信号機(しんごうき)は、車や人が安全(あんぜん)に通行できるように3つの色で指示(しじ)を出しています。その色とは「赤、黄(き)、緑(みどり)」で、これはどの国も同じです。それぞれの色は、歩いている人には次(つぎ)のような指示(しじ)となります。
「赤」:道路(どうろ)を横断(おうだん)してはいけない
「黄(き)」:道路(どうろ)の横断(おうだん)を始めてはいけない。また、道路(どうろ)を横断(おうだん)している場合(ばあい)は、急いでその横断(おうだん)を終えるか、または横断(おうだん)をやめて引(ひ)き返(かえ)さなければならない
「緑(みどり)」:進(すす)むことができる
この3つの色の信号機(しんごうき)以外にも、「赤」と「緑(みどり)」だけの歩道用の信号機(しんごうき)もありますが、色の表(あらわ)す意味は同じです。
3色の信号機(しんごうき)
2色の信号機(しんごうき)
信号機(しんごうき)によって見え方にちがいがありますが、赤は「赤信号(あかしんごう)」、黄(き)は「黄信号(きしんごう)」とよばれています。
でも「緑(みどり)」の信号はどうでしょう。私は「緑(みどり)」と書きましたが、これを日本人が「青信号(あおしんごう)」とよんでいるのを聞いたことはありませんか。なぜ「緑(みどり)」なのに「青(あお)」なのでしょうか。
日本では「青(あお)」という語は古くから使われていましたが、古い時代には、「青(あお)」が表(あらわ)す色は「緑(みどり)」もふくまれていて、「青(あお)」と「緑(みどり)」をはっきりとは区別(くべつ)していなかったのです。たとえば春になって木にはえる若(わか)い葉(は)を見て、「青々(あおあお)した若葉(わかば)」などといいます。「若葉(わかば)」を「青葉(あおば)」と言うこともあります。
緑(みどり)色をしているが「青葉(あおば)」という
これと同じで、信号機(しんごうき)の「緑(みどり)」も「青信号(あおしんごう)」と言ってしまうのです。「緑(みどり)信号(しんごう)」と言う人はほとんどいません。日本の法律(ほうりつ)にも、道路(どうろ)の信号機(しんごうき)は「赤色」「黄(き)色」「青(あお)色」があると書かれています。
ただだからといって、日本人が青(あお)と緑(みどり)の区別(くべつ)ができないわけではありません。色を表(あらわ)す語の範囲(はんい)は、民族(みんぞく)によってちがうのです。日本の古い時代には、白・黒・赤・青(あお)という色の語があり、そのあとに黄(き)や緑(みどり)という語が出てきて使われるようになったと考えられています。ところが、民族(みんぞく)によっては日本とはちがい、青(あお)よりも先に緑(みどり)が使われていたところもあったのです。
古い時代の日本では、白(左上)、黒(右上)、赤(左下)、青(右下)の4つの色を表す語が使われていた
ところで、「赤信号(あかしんごう)」「黄信号(きしんごう)」「青信号(あおしんごう)」は交通(こうつう)信号(しんごう)として、赤が止まれ、黄(き)が注意、緑(みどり)が進(すす)めという意味がありますが、この意味からさらに別の意味が生まれました。
「赤信号(あかしんごう)」は、心配(しんぱい)なことが今すぐに起こりそうだという意味です。「会社の経営(けいえい)に赤信号(あかしんごう)がともる」などと使います。
「青信号(あおしんごう)」は、何も問題がないので物事を進(すす)めてよいという意味です。「新しい駅の建設計画(けんせつけいかく)に青信号(あおしんごう)が出る」などと使います。
「黄信号(きしんごう)」は、心配(しんぱい)なことが起こりそうなことをいいます。「お店の売り上げに黄信号(きしんごう)が出始めた」などと使います。
3語とも仕事でよく使われると思います。
文:神永曉
写真:写真AC
(2023.6.2)