日本語多読道場 yomujp
日本語には、「雨」を表(あらわ)す語がたくさんある!
日本は雨の多い国です。そのため、日本の暮(く)らしは、雨ととても深(ふか)い関係(かんけい)にあります。そして、雨を表(あらわ)す語も、日本語にはたくさんあります。
以前私は、日本語の雨の名前を集めてみたことがあります。すると、おもなものだけで400語近くありました。ある地方だけで使われている語もありますから、それも数(かぞ)えると、日本語の雨の名前はもっとたくさんあると思います。
雨の名前は、降(ふ)る季節(きせつ)や、降(ふ)り方などによって、いろいろな名前が付(つ)けられました。
たとえば、6月から7月くらいには、日本では雨の日が続(つづ)くようになります。このときの雨を「梅雨(ばいう)」と言います。「梅」は植物(しょくぶつ)のウメのことです。ちょうどこのころにウメの実(み)がなりますが、そのころに降(ふ)る雨だから「梅雨(ばいう)」と呼(よ)ばれるようになったようです。
ウメの花
ウメの実(み)
また「梅雨」と書いて「つゆ」とも読みます。ただ、なぜそのように読むのかよくわかっていません。空気が冷(ひ)えて、空気中の水蒸気(すいじょうき)が水となりものの表面(ひょうめん)につく「つゆ(露)」と関係(かんけい)があるという人もいますが、確実(かくじつ)ではありません。この雨は「五月雨」と書いて「さみだれ」とも言います。
葉(は)の上のつゆ
「秋雨(あきさめ)」があるのですから、「春雨」もあります。これは「はるさめ」と読みます。中国から日本に伝(つた)わった食べ物に「はるさめ」があります。この「はるさめ」という名は日本で付(つ)けられました。雨の「春雨(はるさめ)」は静(しず)かに降(ふ)る雨で、食べ物の「はるさめ」はその雨のようだという意味のようです。
食べ物の「はるさめ」
ゆでた「はるさめ」
「秋雨(あきさめ)」「春雨(はるさめ)」はありますが、「夏雨」「冬雨」という語はありません。夏や冬でも雨は降(ふ)りますが、おもしろいですね。夏に降(ふ)る雨の代表(だいひょう)は「夕立(ゆうだち)」です。夕方に降(ふ)ることから「夕立(ゆうだち)」と言います。同時に雷(かみなり)が鳴(な)ることも多く、そのような雨を「雷雨(らいう)」と言います。
雷(かみなり)
秋の終わりから冬にかけて、短(みじか)い時間に少しだけ降(ふ)る雨を「しぐれ」と言います。漢字で「時雨」と書きます。
雨の降(ふ)り方によっても、名前が付(つ)けられています。音もなく降(ふ)るこまかな雨は「糠雨(ぬかあめ)」「小糠雨(こぬかあめ)」と言います。このような雨は、「霧雨(きりさめ)」「細雨(さいう)」「微雨(びう)」とも言います。
急に降(ふ)り出してすぐに止む雨は、「にわか雨」「驟雨(しゅうう)」と言います。
「きつねの嫁入(よめい)り」というおもしろい名前の雨もあります。これは、日がてっているのに降(ふ)る雨のことです。「嫁入(よめい)り」は女性(じょせい)が結婚(けっこん)のために夫(おっと)の家に行くことを言いますが、この場合(ばあい)は結婚(けっこん)に行くための行列(ぎょうれつ)のことです。
キツネ
キツネは、日本では昔(むかし)から人間をだます動物だと考えられていました。日がてっているときは、ふつう雨は降(ふ)りません。だから、そのようなときに降(ふ)る雨は、キツネが人間をだましたものだと考えたのでしょう。そしてその雨のときは、まるでキツネが嫁入(よめい)りする行列(ぎょうれつ)が見えるようだと考えたのかもしれません。
きつねの嫁入(よめい)り(行列(ぎょうれつ))
文:神永曉
写真:フォトAC/岡野秀夫
(2022.10.14)