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日本の行事(ぎょうじ)年越(としこ)し①」

12月も終わりに近づくと、(あわ)ただしい気分になったり、また、新しい年を(むか)えることを楽しみに感じたりしますね。お正月(しょうがつ)には、「(とし)神様(がみさま)」という新年の神様(かみさま)が一年の幸福(こうふく)健康(けんこう)をもって家にやってくると言われています。その(とし)神様(がみさま)をお(むか)えするために、年末(ねんまつ)(その年の終わり)には掃除(そうじ)をしたり、家を(かざ)ったりして、さまざまな準備(じゅんび)をします。どんなことをするのか、一緒(いっしょ)に読んでいきましょう。

大掃除 ( おおそうじ )

まずは家中(いえじゅう)(そう)()して、一年の(よご)れを落とします。年末は寒いし、忙しいし、あまり掃除(そうじ)をしたくないなあと思う人もいるでしょうね。でも、これは歴史(れきし)のある行事(ぎょうじ)、「すす(はら)い」がもとになっていると言われています。すす(はら)いというのは、宮中(きゅうちゅう)、つまり天皇(てんのう)が住むところを掃除(そうじ)する行事(ぎょうじ)で、平安(へいあん)時代(じだい)(794-1185年)の(ころ)に始まったようです。その(ころ)のすす(はら)いは、ただ掃除(そうじ)するというより、その年の(やく)、つまり悪いものを()(はら)うという意味がありました。その後、神社やお寺などでも行われるようになり、次第(しだい)に人々の間にも広がって習慣(しゅうかん)となっていったようです。ちょっと気が(すす)まない掃除(そうじ)も、一つの行事(ぎょうじ)、イベントだと考えると、楽しくできそうです。すっきりした気持ちで新年が(むか)えられますね。

門松(かどまつ)

掃除(そうじ)をしてきれいになったら、今度は家を(かざ)りましょう。

まずは門松(かどまつ)(もん)玄関(げんかん)の前に(かざ)ります。これは(とし)神様(がみさま)が家に入るための目印(めじるし)とされています。門松(かどまつ)にもいろいろなものがありますが、基本的(きほんてき)(まつ)(たけ)は使われているようです。なぜこれらの植物(しょくぶつ)を使うのでしょうか。(まつ)は冬でも()れずに()がついていることから、長寿(ちょうじゅ)、つまり(なが)()きの意味があります。(たけ)()れにくく、上にまっすぐに()びるため、生命力(せいめいりょく)(あらわ)します。ほかには(うめ)南天(なんてん)などもよく使われます。(うめ)は、2月から3月(ごろ)に花を()かせ、春の(おとず)れを知らせる花で、上品(じょうひん)さの象徴(しょうちょう)です。南天(なんてん)は、「なんてん」という音が「(なん)(てん)じて(ふく)となす」、つまり悪いことをいいことに変えるという意味のことばにつながることから、縁起(えんぎ)がいいものとされています。

大きな門松(かどまつ)(かざ)る場所がない場合は、玄関(げんかん)の中などに、小さな門松(かどまつ)(かざ)ればいいでしょう。

南天(なんてん)

しめ(なわ)・しめ(かざ)

次にしめ(なわ)やしめ(かざ)りです。これも玄関(げんかん)(かざ)ります。しめ(なわ)は、神様(かみさま)(むか)えるのにふさわしい場所だということを(しめ)すものです。また、神様(かみさま)がいるところと、そうでないところの境界(きょうかい)(せん)ともいわれています。しめ(かざ)りは、しめ(なわ)にお正月(しょうがつ)らしく縁起(えんぎ)のいいものを(かざ)ったものです。(たと)えば、みかんに()(だいだい)という果物(くだもの)、ゆずり()裏白(うらじろ)という植物(しょくぶつ)などを(かざ)ります。(だいだい)は「代々(だいだい)繫栄(けいえい)する、つまり子どもに(めぐ)まれ、これからもずっとこの家が続いていきますように。ゆずり()は新しい()が出てから古い()()ちることから、子どもが立派(りっぱ)成長(せいちょう)し、親からこの家を受け()いでいけますように。そして裏白(うらじろ)は、心に裏表(うらおもて)がない、また白髪(しらが)が出るまで(なが)()きできますように、という(ねが)いが()められています。

門松(かどまつ)もしめ(かざ)りもさまざまな種類(しゅるい)があります。どちらも(もん)玄関(げんかん)など外に(かざ)られているので、機会があれば、見てみると、いろいろな発見(はっけん)があるかもしれません。

鏡餅(かがみもち)

そして鏡餅(かがみもち)です。なぜ「(かがみ)(もち)かというと、(むかし)から(かがみ)には神様(かみさま)がいると信じられていたので、(かがみ)()た形の(もち)を作り、(とし)神様(がみさま)居場所(いばしょ)として大切に(かざ)るようになったようです。大小(だいしょう)(もち)は月と太陽(たいよう)(あらわ)し、二つ(かさ)ねるのは(ふく)(かさ)なりますように、という意味だそうです。そして、鏡餅(かがみもち)(かざ)るだけではありません。地域(ちいき)によって多少(たしょう)(ちが)いはあるようですが、だいたい新年の1月11日に、鏡開(かがみびら)きといって、鏡餅(かがみもち)を食べ、(とし)神様(がみさま)(ちから)を分けてもらって、病気やけがをせずに幸せの多い一年になるように(いの)ります。

掃除(そうじ)をして、(かざ)りつけもして、(とし)神様(がみさま)(むか)える準備(じゅんび)ができましたね。さあ、次は何をしましょうか。

文:新階由紀子

写真:写真AC

イラスト:イラストAC

(2022.12.16)

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