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日本の行事(ぎょうじ)「お盆(ぼん)」
みなさんは「お盆(ぼん)」という言葉(ことば)を聞いたことがありますか。お盆(ぼん)というのは、大切な先祖(せんぞ)を家に迎(むか)えて、ともに過(す)ごす期間(きかん)のことです。地域(ちいき)によって、時期(じき)や習慣(しゅうかん)に違(ちが)いがあり、また時代とともに、その過(す)ごし方(かた)も変わってきていますが、ここでは、お盆(ぼん)の過(す)ごし方(かた)の一つの例(れい)を紹介(しょうかい)しましょう。
初めに、お盆(ぼん)とはいつでしょうか。多くの地域(ちいき)では8月13日から16日までですが、1か月前の7月13日から16日のところもあります。8月13日から16日までは「お盆(ぼん)休み」といって、会社などが休みになることも多く、帰省(きせい)、つまりふるさとに帰って家族で過(す)ごす人も多いです。たくさんの人が一度に移動(いどう)するので、飛行機(ひこうき)や新幹線(しんかんせん)、そして高速(こうそく)道路(どうろ)はかなり混雑(こんざつ)し、「お盆(ぼん)の帰省(きせい)ラッシュ」と呼(よ)ばれて、ニュースにもなります。
上の写真を見てください。これは何でしょう。え、キュウリとナス? はい、そうです。キュウリとナスですが、何かの動物に見えませんか。キュウリが馬、ナスが牛です。これらに乗って、先祖(せんぞ)が来たり帰ったりするのです。来るときはキュウリの馬に乗って、帰るときはナスの牛に乗って帰ります。どうしてだと思いますか。それは、馬は走るのが速いので早く帰ってこられるように、反対に、牛は遅いのでゆっくり帰るように、という意味があるのです。おもしろいですね。みなさんの国に似(に)ているものはありますか。
では、お盆(ぼん)にはどんなことをするのでしょうか。
13日は「迎(むか)え盆(ぼん)」といって、お墓(はか)から先祖(せんぞ)を迎(むか)えます。お墓参(はかまい)りに行って、線香(せんこう)をあげ、その火を提灯(ちょうちん)で家に持ち帰り、家の仏壇(ぶつだん)のろうそくに火をつけます。そして、その火でもう一度、線香(せんこう)をあげます。火は、先祖(せんぞ)が迷(まよ)わずに家に帰れるように、という目印(めじるし)の意味を持ちます。
線香(せんこう)や提灯(ちょうちん)、仏壇(ぶつだん)は見たことがない人もいるでしょうね。ちょっと説明しましょう。線香(せんこう)は、火をつけて燃(も)やすと、いい香(かお)りがします。線香(せんこう)をあげるのには、いくつかの意味がありますが、香(かお)りでその場(ば)を清(きよ)める、つまりきれいにする、仏(ほとけ)様(さま)と心をつなぐ、それから、仏教(ぶっきょう)には、亡(な)くなった人は香(かお)りを食べるという考え方もあります。提灯(ちょうちん)は、中のろうそくに火をつけて持ち歩くことができるもので、いわば懐中(かいちゅう)電灯(でんとう)のようなものでしょうか。仏壇(ぶつだん)は、家の中で仏(ほとけ)様(さま)や先祖(せんぞ)がいるところで、仏(ほとけ)様(さま)や先祖(せんぞ)を敬(うやま)い、食べ物や花、線香(せんこう)などを供(そな)えます。
線香(せんこう
提灯(ちょうちん
仏壇(ぶつだん
そして14日と15日は、先祖(せんぞ)と家で過(す)ごします。仏壇(ぶつだん)に花などを飾(かざ)り、また精進(しょうじん)料理(りょうり)という料理を作ったりします。精進(しょうじん)料理(りょうり)というのは、肉や魚を使わず、豆(まめ)や野菜(やさい)などで作る料理のことです。これは、動物を殺(ころ)さないという、仏教(ぶっきょう)の教えに基(もと)づいています。食べたことがある人もいるでしょうか。代表的(だいひょうてき)な料理は、野菜(やさい)の天ぷらや煮物(にもの)、豆腐(とうふ)に細(こま)かく切った野菜(やさい)を混(ま)ぜて揚(あ)げたがんもどき、けんちん汁(じる)という、豆腐(とうふ)やごぼう、レンコンなどが入ったスープ、といったところでしょうか。体によさそうですね。伝統(でんとう)を守(まも)りつつも、今の時代らしい、新しい精進(しょうじん)料理(りょうり)や、亡(な)くなった人が好きだった野菜(やさい)料理を作って、一緒(いっしょ)に味(あじ)わってもいいですね。
精進料理(しょうじんりょうり)
がんもどき
けんちん汁(じる)
お盆(ぼん)の最後(さいご)の日、16日は「送(おく)り盆(ぼん)」で、先祖(せんぞ)をお墓(はか)に送ります。「迎(むか)え盆(ぼん)」と反対(はんたい)で、仏壇(ぶつだん)のろうそくに火をつけて線香(せんこう)をあげ、その火を提灯(ちょうちん)に移(うつ)してお墓(はか)に持っていきます。
そして、お盆(ぼん)といえば、盆踊(ぼんおど)りを思い浮(う)かべる人もいるでしょう。盆踊(ぼんおど)りはもともとは宗教的(しゅうきょうてき)な行事(ぎょうじ)で、帰ってきた先祖(せんぞ)のために15日の夜に踊(おど)り、16日に送るというのが仏教(ぶっきょう)の盆踊(ぼんおど)りでした。それが時代とともに変化し、誰(だれ)でも参加(さんか)できる楽しい祭(まつ)りになりました。太鼓(たいこ)や笛(ふえ)の音に合わせて、みんなで楽しく踊(おど)る盆踊(ぼんおど)り、自分も先祖(せんぞ)も楽しめれば、いちばんいいのでしょうね。全国(ぜんこく)各地(かくち)でさまざまな盆踊(ぼんおど)りがありますが、その中で日本三大(さんだい)盆踊(ぼんおど)りをご紹介(しょうかい)します。機会(きかい)があったら、出かけてみてはいかがでしょうか。
盆踊(ぼんおど)り
◆「郡上(ぐじょう)踊(おど)り」岐阜県(ぎふけん)郡上市(ぐじょうし)。7月下旬(げじゅん)から9月上旬(じょうじゅん)にかけて行(おこな)われ、8月13日から16日までは「徹夜(てつや)踊(おど)り」で盛(も)り上がる。
◆「阿波(あわ)おどり」徳島県(とくしまけん)徳島市(とくしまし)。8月12日から15日まで行(おこな)われ、100万人を超(こ)える観光客(かんこうきゃく)が訪(おとず)れる。1年を通(とお)して阿波(あわ)踊(おど)りが楽しめる「阿波(あわ)おどり会館(かいかん)」もある。
◆「西馬音内(にしもない)盆踊(ぼんおど)り」秋田県(あきたけん)羽後町(うごまち)。8月16日から18日まで行われる。道に置(お)かれたかがり火を囲(かこ)むように輪(わ)になって踊(おど)る。衣装(いしょう)も見どころ。
文:新階由紀子
写真:写真AC
イラスト:イラストAC
(2022.7.26)