金魚と日本人
*日本人は魚好き
私たち日本人は、魚好きな国民として知られています。私も魚料理をよく食べます。一週間に三回は魚を料理します。煮たり、焼いたり、生のまま食べたりします。お寿司も大好きでよく食べに行きます。
日本は周囲を海に囲まれているので、新鮮な魚が手に入りやすいという特長があります。魚を食べることは、良質な栄養を取ることにつながりますから、恵まれた環境だと、感謝しています。
そのためでしょうか。
私はしばしば魚に「お」をつけ、お魚と呼びます。「お」は大切なものにつけることが多いので、知らないうちに「魚」に対して丁寧な言葉を使いたくなるのかもしれません。
魚料理
刺身
さて、魚は食べるだけではありません。私たちは魚を飼ったり、見て楽しんだりするのが大好きです。日本にはたくさんのアクアリウムがあります。お休みの日などはかなり混んでいます。皆、魚を観るのが好きなのです。
それだけではありません。
家で魚を飼うのも好きです。とくに「金魚」を飼う人が多いです。金魚は食べるためではなく、観ることを目的に作られたものです。フナという魚から突然体の色が赤い魚が生まれることがあります。それを人間が選び、掛け合わせた結果、観る用に飼うための金魚が誕生したとされています。ただ、まだ研究中で別の考え方もあります。ですから、金魚がどうやってできたのか、これから明らかにされていくでしょう。
金魚鉢
金魚を飼うのは比較的簡単です。金魚鉢を用意して、水の質に気をつければ、子供でも金魚を飼うことができます。私も子供の頃からずっと金魚を飼うのを楽しんで来ました。
金魚は犬のように吠えたりしません。猫のように毛を撒き散らしたりもしません。金魚鉢の水を替え、専用の餌を与えていれば、驚くほど長く生きます。ペットとして飼うには便利なのです。
錦鯉
お金持ちの中には、庭に大きな池を作り、そこで錦鯉を飼う人もいます。言うまでもありませんが、錦鯉は食べるための魚ではありません。ただ、観るために飼うのです。錦鯉は様々な模様があり、それが魚であることを忘れるくらい綺麗です。着物を着ているようでもあります。高価なものですから、富の象徴としての役目も果たします。
*金魚と日本人
いつ頃から日本人は金魚を飼うようになったのでしょう。
『金魚と日本人』によると、「金魚が中国から日本へ初めて渡ってきたのは、16世紀初頭、今からおよそ500年前の室町時代のこと」だといいます。海を越えてやってきた金魚は、「すっかり日本の水になじみ、いつのまにかほとんど日本の魚になった」といいます。
金魚が中国から伝わった頃は、金魚は大変、珍しく貴重なものでした。当然のことですが、大変、高価で、庶民には遠い存在でした。ところが、江戸時代になると、様子は一変します。一般の人々も金魚を飼うことができるようになったのです。飼育についての知識も広まり、庶民も金魚を楽しむようになりました。
浮世絵などにも金魚の絵が用いられるなど、観るための金魚は人気を集めました。有名な浮世絵画家、喜多川歌麿の描いた錦絵にも、ガラスの容器に入った金魚が描かれています。
喜多川歌麿の浮世絵
こうして長い間、日本人は金魚を可愛がって来ました。
水槽の中の金魚
傘とのコラボレーション1
傘とのコラボレーション2
金魚に親しんで育った私ですが、「エンターテイメントアク和リウム」を初めて観たときはとても驚きました。知らない世界に来たかのようでした。子供の頃、金魚鉢で数匹の金魚を飼っていた思い出とは異なるほど、豪華な気持ちを味わいました。
万華鏡
金魚と目があいました
可愛い魚
展示されているのは、金魚だけではありません。タツノオトシゴやクラゲも観ることができます。金魚の種類も豊富です。水族館と異なるのは、魚を見せるだけではなく、魚を使って日本の美に迫ろうとしている点だと思います。
アロワナ
タツノオトシゴ
青の世界
デメキン
金魚が室町時代に日本に伝わったことは既にお話ししました。
そして、今、日本人は金魚を使い、新しい世界を作ろうとしています。飼うというよりも、金魚を絵の具にして作品を創るようです。 生きものを扱うだけに、様々な問題があるかもしれません。けれども、今まで観たことのない世界を楽しむことができます。
金魚の持つ不思議な世界を楽しんでみてはいかがでしょう。それは日本人特有の美の感覚が反映されたものではないでしょうか。金魚を飼い、それを可愛がるという文化は、日本人が長い間大切に守り続けた文化です。
ランタンとのコラボ
クラブのようです
参考文献:『金魚と日本人』 講談社学術文庫 講談社 2019年
文:三浦暁子
写真:三浦暁子/フォトAC
(2023.05.16)