イカの数え方
日本語ではものを数えるとき、そのものによって、「いっこ・にこ」「ひとつ・ふたつ」、「1本・2本」「1枚・2枚」のように、いろいろな数え方をします。
この「こ」「つ」「本」「枚」の何を選ぶかは、その数えるものの性質や形によって変わります。
「いっこ・にこ」「ひとつ・ふたつ」の「こ」や「つ」は、いろいろなものを数えるときに使います。
「本」は細くて長いものを数えるときに使いますが、ほかにも、剣道や柔道などで、技の数を数えるときや、映画の作品の数を数えるときにも使います。
どちらも一本
「枚」は紙・板・皿などの薄くて平らなものを数えるときに使います。
このような、ものを数えるときに使う語は、日本人でもどの語を選んだらいいのか、けっこうむずかしいのです。なぜなら、どうしてその語を使うの?と思うような語もあるからです。
たとえば、海にいるイカがそうです。海や水族館で泳いでいるイカを数えなさいと言われたら、ふつうは「1ぴき・2ひき・3びき」と数えます。
ところが、魚屋さんやスーパーで売られているイカは、「1ぴき・2ひき」と数えることもありますが、「1ぱい・2はい・3ばい」と数えることもあります。その違いは何なのでしょうか?
1ぴき? 1ぱい?
「ひき」は漢字で「匹」と書きます。ふつう、動物、虫、魚などを数えるときに使います。前の数字によって、「びき」「ぴき」とも言います。「3びき」「6ぴき」のように。イカは動物ですから、「ひき」を使って数えても問題はありません。
では、「はい」とはいったい何なのでしょうか?
この「はい」は、漢字で書くと「杯」です。この「はい」も、前にある数字によって「ぱい」「ばい」と読み方が変わります。
この「杯」という漢字は、酒を入れる入れ物という意味です。そして、入れ物に入れた水などの液体やご飯などを数えるときにも使います。
イカを数えるときに「はい」を使うのは、イカの体の部分が入れ物のように見えるからです。「そのようには見えない」、なんて言わないでください。昔の日本人にはそのように見えたのです。もちろん、イカは必ず「はい」を使って数えなければいけないわけではありません。
このように、おもしろい数え方をする動物はほかにもいます。たとえばウサギがそうです。ウサギは「1わ・2わ・3ば(わ)」と数えることがあります。「わ(ば)」は漢字で「羽」と書きます。「羽」は鳥の「はね」のことで、鳥を数えるときに使います。
なぜ、ウサギは鳥ではないのに「わ(ば)」で数えるのでしょうか。日本では昔、お坊さんは4本足の動物を食べることを禁止されていたので、2本足で立つことが多いウサギを鳥だと言って食べたという説があります。また、ウサギの大きくて長い耳が鳥のはねに見えるためだという説もあります。
鳥に見える?
でも最近は、ウサギは「1ぴき・2ひき・3びき」と数えることが多いようです。「ひき(匹)」で数えた方が、わかりやすいからでしょう。
文:神永曉
写真:フォトAC/岡野秀夫
(2022.6.21)