鳥居
これを「鳥居」といいます。なぜそのような名前が付けられたのかはっきりとはわかりません。むかし神にそなえていたニワトリがとまった木という意味の「とまり木」からという説があります。ニワトリは飛ぶことのできない「にわ(庭)のとり(鳥)」という意味ですが、日本ではむかしからとても大事な鳥だったのです。
鳥居が神社の入り口にたてられているのは、神社の内がわと外がわとを分けるためです。鳥居の内がわが、神さまのいる神聖な場所と考えられたのです。したがって、鳥居のない神社はありません。また、神社には多くの神さまがいると信じられていますので、神社の中でも別の神さまがいると考えられている場所には鳥居がたてられています。
鳥居はどれも同じような形に見えますが、じつはそれぞれの神社によって異なります。その形は60種類以上もあるといわれています。
たくさんの鳥居が並んでいて有名な京都の伏見稲荷大社の鳥居は、全体は赤いのですが一番上の屋根のような部分だけ黒く、柱の根元の部分も黒くなっています。この形の鳥居は伏見稲荷大社だけでなく、各地にある稲荷神社にも多い形です。
伏見稲荷大社の大鳥居と千本鳥居
稲荷神社にまつられた神さまは、江戸時代には武士だけでなく、農民や、商人、職人などいろいろな人から信じて大切にされました。江戸時代からあることわざで、「伊勢屋稲荷に犬の糞」というのがあります。これは江戸(今の東京)の町の中であちこちにあって、よく見かけるものが3つあるということです。それは、伊勢国(今の三重県)出身の商人が経営している伊勢屋という名の店と、稲荷神社と、道の上に落ちたイヌのくそだというのです。「くそ」は大便、うんこのことです。江戸の町にはイヌがたくさんいて、イヌのうんこが道にたくさん落ちていたようです。
一番大きな鳥居は、和歌山県の熊野本宮大社の大鳥居です。大社から500メートルほど離れた田んぼの中にたっていて、高さは34メートルもあります。海の中に立っている鳥居もあります。有名なのは広島県の宮島にある厳島神社の鳥居です。
鳥居は色のちがいだけでなく、よく見ると形も少しずつちがいます。一番わかりやすいのは横になっている2本の柱の形です。その柱がまっすぐなものと、両側が少しだけ上に向いているものとがあります。ほかにも形のちがう鳥居はありますが、なにしろ60種類以上のちがいがあるようですから、こまかな説明はやめておきます。ただ、もし神社に行く機会があったら鳥居がどのような形をしているかよく見てください。
神社には建物だけでなく、見るべきところがほかにもたくさんあるのです。
文:神永曉
写真:photoAC
(2024.12.17)