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かみなり

はげしい雨がふったときに、空に電気の(ひかり)があらわれ、少しおくれてごろごろととても大きな音が聞こえてくることがあります。これを「かみなり」といいます。漢字で「(かみなり)」と書きます。

「かみなり」というのは、「(かみ)()り」という意味から生まれた語だと考えられています。むかしの日本人は、(くも)の上にいる(かみ)さまが大きな音をならしていると考えたのです。

かみなり)

日本人が考えた「かみなり」の(かみ)さまは、とてもおもしろい(かみ)さまです。その姿(すがた)は、上半身(じょうはんしん)ははだかで、トラの(かわ)のふんどしをしめています。「ふんどし」というのは男性(だんせい)(こし)のまわりにつける一枚(いちまい)(ぬの)です。おすもうさんがつけている「まわし」も「ふんどし」ということがあります。そして背中(せなか)には連鼓(れんこ)というたいこを背負(せお)い、これをたたいて()らします。「連鼓(れんこ)」はいくつかの小さなたいこをつなげたものです。「かみなり」のごろごろという音はこのたいこをたたく音だというわけです。

かみなり)(かみ)さま

そしてなぜか「かみなり」の(かみ)さまは人間のおへそがすきなのです。人間がおへそを出していると()りに来るといわれています。私もこどものころ、(とお)くでごろごろという「かみなり」の音が聞こえてくると、おとなから、おへそを()られるから早くかくしなさいと言われました。

この「かみなり」の(かみ)さまは「雷神(らいじん)」ともいうのですが、むかしから風の(かみ)さまである「風神(ふうじん)」とともに()にえがかれてきました。かみなりも風も、人間がおそれをいだくほどの強い力をもった自然(しぜん)現象(げんしょう)だからです。

この「雷神(らいじん)」and「風神(ふうじん)」をかいた有名な()があります。京都(きょうと)建仁(けんにん)()というお(てら)にある、俵屋宗達(たわらやそうたつ)がかいた「風神(ふうじん)雷神(らいじん)()屛風(びょうぶ)」です。俵屋宗達(たわらやそうたつ)は、およそ1600年ごろから1630年代にかけて活躍(かつやく)した画家です。「屏風(びょうぶ)」は室内(しつない)に立てて風をさえぎったり、仕切りや装飾(そうしょく)に用いたりするもので、()りたためるようになっています。

屏風(びょうぶ)

「かみなり」は大きな音をたてるところから、大きな(こえ)不満(ふまん)を言ったり、相手(あいて)にいろいろとめんどうなことを言ったりする、少し年をとった男性(だんせい)のことを「かみなりおやじ」と言います。

「かみなり」はお菓子(かし)の名にも使われています。東京の浅草(あさくさ)で売られている「かみなりおこし」です。「おこし」は(こめ)などから作ったおかしで、食べると大きな音がするから「かみなり」というわけではありません。浅草(あさくさ)にある浅草寺(せんそうじ)というお(てら)(もん)雷門(かみなりもん)とよばれていて、その(もん)の前で売っているおかしだからです。雷門(かみなりもん)は、風神(ふうじん)雷神(らいじん)(ぞう)が左右にある(もん)です。(もん)()かって左に雷神(らいじん)(ぞう)が、右に風神(ふうじん)(ぞう)がおかれています。

かみなりおこし
(かみなり)(もん)

目上の人からひどくどなりつけられてしかられることを「かみなりが()ちる」と言います。「授業(じゅぎょう)(ちゅう)にいねむりをしたら先生のかみなりが()ちる」などと使います。日本人にとって、「かみなり」は自然(しぜん)現象(げんしょう)だけではないのです。

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文:神永曉

画像:写真AC/イラストAC

(2025.7.18)

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