河童
鬼、天狗に続いて日本の三大妖怪の最後は、河童です。一般的によく描かれる河童は、水辺に住み、子供のような体形をしています。体は緑色で濡れています。また、口はくちばしのように尖っていて、背中に亀のような甲羅があります。手には、水かきがあり、泳ぐのが上手です。頭の上に水の入った皿をのせていて、元は水の神だった、またはその一族だと考えられています。
しかし、江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎は『北斎漫画』の中でスッポンのような体形の河童を描いています。また、1853年に刊行された日本の妖怪絵本『狂歌百物語』でも、河童は亀のように紹介されています。
『北斎漫画』(3編、片野東四郎、明11)の河童
(一部加工、出典:国立国会図書館デジタルコレクション)
『狂歌百物語』(富山大学附属図書館所蔵)の河童
(一部加工、出典:国書データベース)
水辺の近くを通りかかった人や泳いでいる人を川の中へ引きずり込んで溺れさせる、という河童の話は日本各地に伝わっており、またその名前も川太郎、川子、川童などいろいろあります。
「川太郎」と書かれた河童
(寺島良安尚順編『和漢三才図会:105巻首1巻尾1巻』[27],[江戸時代]を一部加工、出典:国立国会図書館デジタルコレクション)
そのせいか、妖怪のイメージとは別に、河童は水を操る精霊としても考えられるようになりました。日本には、河童にゆかりのあるお寺や神社が多くあります。
東京都台東区にある曽源寺は、「かっぱ寺」として知られています。江戸時代の治水工事を隅田川に住んでいた河童が手伝ったそうで、このお寺は火難、水難の厄除け(火や水の危険が寄って来ないようにすること)にご利益があると言われています。
また、高知県南国市の河伯神社には、河童が水の神として祀られています。馬を川の中に引きずり込もうとした河童が、反対に陸に引きずり出されて捕まったのですが、助けてもらった代わりに、これからは決して村の人を溺れさせないと誓った、という話が残っているそうです。
北九州市にある皇産霊神社では、よくないもの=不幸を水に引きずり込んで、洗って福に変えてくれる招福河童の像がたくさんあり、いろいろな河童を見ることができます。
河童の好物はきゅうりだと言われていますが、それは、水の神のお供物がきゅうりであることが理由だと考えられています。これも河童が水の化身だという証拠になるかもしれません。お寿司のきゅうり巻きのことを「かっぱ巻き」と呼ぶのもこれが由来の一つのようです。
また、河童は相撲好きだと言われています。福岡県うきは市の高橋神社では、河童と神様が相撲をとったという伝説があり、埼玉県志木市では、船頭がかっぱに相撲を挑まれたという昔話が残っているそうです。
最後に、河童を使ったことわざを一つ紹介しましょう。
「河童の川流れ」は、河童のように泳ぐのが上手なものでも、川に流されてしまうことがある、つまり、どんな名人や達人でも時には失敗することがある、という意味です。
川の近くなどで見かける「危ないので、泳いではいけません」の立て札などに河童が描かれているのを見たことがありませんか。これは、泳ぐのが上手な河童でも溺れてしまうくらい危険ですよ、ということです。
河童は人を溺れさせたり、動物を川へ引きずり込んだりする妖怪ですが、その反面、子どものようにいたずらっぽくて、相撲が好きな生き物です。また、水の霊として、水の恐ろしさを教えてくれる存在でもあります。人々が水の事故や災害に遭わないように、そして、私たちが水の神様に守ってもらえるように河童がいるのかもしれませんね。